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アングル:自民総裁選、市場は「岸田路線」の継続性を見極め

2024年09月12日(木)16時27分

9月12日告示の自民党総裁選について、市場関係者は安倍晋三政権以来の積極的な財政出動を柱とした経済政策の流れをどこまで次期首相が踏襲するかに注目している。写真は東京都内の自由民主党本部。2023年12月撮影(2024年 時事通信)

Yoshifumi Takemoto Noriyuki Hirata Tomo Uetake

[東京 11日 ロイター] - 12日告示の自民党総裁選について、市場関係者は安倍晋三政権以来の積極的な財政出動を柱とした経済政策の流れをどこまで次期首相が踏襲するかに注目している。どの候補も大きな変更を示唆していないが、「アベノミクス」の継承をうたう高市早苗・経済安保担当相や規制緩和を前面に打ち出す小泉進次郎・元環境相に期待する声が市場では聞かれる。

「誰が当選するかよりも岸田(文雄)政権の新しい資本主義・積極財政の方針が継承されるかどうかが焦点」と、クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは話す。岸田政権はアベノミクスを基礎に、株式市場や企業統治の改革などをさらに進めた。日銀が3月に17年ぶりとなる利上げに踏み切ったものの、依然として緩和的な金融政策が続いている。

日本の資本市場は主要国の中で最も活況を呈し、日経平均は今年に入り史上最高値を更新した。「海外投資家にはアベノミクスの継承者という意味で高市氏と小林鷹之前経済安保相への期待が強い」と、SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは指摘する。会田氏も「現政権の経済政策の方針は継承され、企業活動の回復を阻害しないように、日銀には緩和的な金融政策の継続を求めていく」と予想する。

ライドシェア全面解禁など、規制緩和を打ち出す小泉氏に注目する投資家も多い。「海外勢が関心を寄せるのは小泉氏だ」と、フランス系資産運用会社コムジェストのポートフォリオマネージャー、リチャード・ケイ氏は話す。期待の中心となるのは、若さと改革イメージ、アベノミクス継承の3点だと指摘。足元では東証改革やガバナンス改革に一巡感が漂うが「新しい若いリーダーが出れば、再び海外勢の日本株への興味が湧くのではないか」という。

一方、経済政策の修正に動くと受け止められている候補に対しては警戒感が出ている。最も望ましい次期首相候補として各種世論調査で首位に立ち、ロイターの企業調査でもトップだった石破茂・元幹事長は、金融所得課税強化を主張したことが市場では不興を買っている。「市場関係者の印象は悪い」と、日銀ウォッチャーとして知られるエコノミストの岩下真理氏は解説する。

また、河野太郎デジタル担当相と茂木敏充幹事長は「日銀の利上げに前向きな発言があったため、警戒されている」(SBI道家氏)という。

27日に投開票を迎える総裁選には林芳正官房長官、加藤勝信・元官房長官、上川陽子外相も出馬を表明しており、過去最多の9人が立候補する。

各候補とも政策を発表しているものの、本格的な論戦はこれから始まる。国内世論向けには派閥の裏金問題を受けて党改革が主要テーマになっており、現時点では経済政策の違いが見えづらいとの指摘もある。

英RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、マーク・ダウディング氏は、「総裁選については一定の関心を持って見ているものの、経済政策に関しては今のところ、候補者間で大きな違いがあるようには見受けられない」と話す。「選挙結果が金融市場に直ちに大きな影響を及ぼすかどうかは判然としない」と語る。

岸田首相の場合は、就任してから市場の評価が高まった。当初は金融所得課税強化などの姿勢を打ち出し「市場の反応は弱く、あまり期待されていなかった」と米運用会社ニューバーガー・バーマンの岡村慧ポートフォリオマネージャーは指摘する。それが足元では「海外の投資家からそれなりに評価は高い」という。

安倍政権下で動き出した資本市場や企業統治の改革を菅義偉政権が引き継ぎ、岸田政権下で一定の成果が出た流れがあり、「東証や金融庁が必要な政策を行える環境が用意されることが重要」と岡村氏は話す。

(竹本能文、平田紀之、植竹知子 編集:久保信博)

*見出しの体裁を整えて再送します。

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