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インドネシアの行動制限緩和、背景に社会・経済への懸念

2021年07月26日(月)17時24分

7月26日、新型コロナウイルスによる死者が急増する中、インドネシア政府が一部の行動制限措置の緩和を決めたことについて、公衆衛生の専門家は、疫学上の判断ではなく、社会・経済に対する懸念が背景にあったとの見方を示している。写真はジャカルタでワクチン接種を受ける女性(2021年 ロイター/Willy Kurniawan)

[26日 ロイター] - 新型コロナウイルスによる死者が急増する中、インドネシア政府が一部の行動制限措置の緩和を決めたことについて、公衆衛生の専門家は、疫学上の判断ではなく、社会・経済に対する懸念が背景にあったとの見方を示している。

ジョコ大統領は25日、7月から導入している新型コロナ対策の行動制限を1週間延長すると発表する一方、美容院、自動車修理工場、市場、レストランの屋外エリアなどは、一定の制限の下で営業を認めると表明した。

ショッピングモールも、感染リスクが高い地域を除き、入場者を収容能力の25%に制限すれば、営業を可能になる。

インドネシア大学の伝染病学者、パンデュ・リオノ氏は「今回の決断は、伝染病の流行ではなく、経済に関連しているようだ」とし、公衆衛生上のルールを守るよう市民に呼び掛けた。

特にジャワ島とバリ島では、1カ月にわたり病院に患者が殺到しているが、ジョコ大統領は25日、感染者数と病床使用数は減少したと発言。具体的な数字には言及しなかった。

企業団体は、大量解雇を回避するため、政府の対応が必要だと主張。先週には、比較的小規模な街頭デモも行われた。

豪グリフィス大学の伝染病学者、ディッキー・ブディマン氏は「問題は、デルタ株の影響で、昨年に比べて、感染拡大が医療機関に及ぼす影響だけでなく、社会・経済・政治に及ぼす影響も、日増しに増えていることだ」と指摘。インドネシアでは労働者の半分以上がインフォーマルセクターで働いており、金銭的な支援が不足してコロナ疲れが広がっているため、政府の選択肢は限られているとの見解を示した。

同氏は「今回の決定は正しい決断だろうか。疫学上はノーだ。だが、状況が複雑なため、政府には他の選択肢がない」と述べた。

ロイター
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