ニュース速報

ワールド

ロシア大統領が新型核兵器を誇示、戦略指針変更の米国けん制

2018年03月02日(金)10時52分

 3月1日、ロシアのプーチン大統領(写真)は演説で、実戦配備済みないし配備態勢が整った一連の新型核兵器を公表した。モスクワで撮影。提供写真(2018年 ロイター/Sputnik/Alexei Nikolskyi/Kremlin via REUTERS)

[モスクワ 1日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は1日の演説で、実戦配備済みないし配備態勢が整った一連の新型核兵器を公表した。世界中どこでも攻撃可能で、米国製のミサイル防衛システムをかいくぐることができると説明した上で、ロシアの同盟国への核攻撃は同国自体への攻撃とみなし、即座に反撃すると強調した。

18日の大統領選を前にした今回の演説は、近年では最も好戦的な内容。プーチン氏がシリアなど特定の同盟国を念頭に置いたのかどうかは不明だが、最近新たな「核態勢見直し(NPR)」を打ち出して核戦略を見直したばかりの米国に対し、戦術レベルでの核兵器使用を控えるよう警告したとみられる。

ただ米政府内では、ロシアの核兵器が既に米国の軍や情報機関が知っている水準を上回る能力を獲得したかどうかは疑わしいとの見方が広がっている。

米国防総省のダナ・ホワイト報道官は「われわれはずっとロシアを監視しており、何も驚いていない。話題になっているこれらの兵器は非常に長期間開発段階にあった」と語った。ジョン・ルード国防次官は、ロシア軍の能力に関する米側の情報を明らかにすることは拒否したが、ワシントンにおけるフォーラムでプーチン氏の説明について「これまでロシア当局が話してきた内容とおおむね一致する」と述べ、特に重大な懸念はないとの見方を示した。

プーチン氏が披露した新兵器の目玉は、北極や南極を経由して攻撃でき、いかなるミサイル防衛システムも擦り抜けられる新型の大陸間弾道ミサイル。小型の核動力エンジンにも言及し、これは低空で機動性の高い巡航ミサイルの射程距離も無制限化可能だと指摘した。そのほかに水中を進む核動力のドローン、超音速兵器、レーザー兵器なども誇示した。

プーチン氏は「こうした新兵器は世界に存在しない。将来的には恐らく(他の地域で)登場するだろうが、それまでにわれわれは別の兵器を考え出すだろう」と発言した。

ロシアのショイグ国防相はプーチン氏の演説後に、今回公表した新兵器はポーランドやルーマニア、米アラスカ州に設置されている北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛システム、また韓国と日本が導入を計画している同システムをまるで「穴だらけの傘」に変えてしまうと豪語し、日本や韓国がそうしたシステムを今買おうとしているのか理解できないと付け加えた。

一方米国はかねてから、ミサイル防衛システムはロシアや中国の長距離核兵器の大規模攻撃を止める力はなく、同システムは北朝鮮やイランなど「ならず者国家」が対象だと明言している。

国防総省のホワイト報道官によると、ロシアの核兵器近代化への米国の対応は、自国の核戦力を抑止に使えるように強化することに向けられているという。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドネシア、追加利上げ不要 為替相場は安定=中銀

ビジネス

原油先物は上昇、米原油在庫減少やFRBの利下げ観測

ワールド

独首相、ウクライナ大統領と電話会談 平和サミット支

ビジネス

円安で基調物価上振れ続けば正常化ペース「速まる」=
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中