最新記事
感染症

この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLiRT」がアメリカで広がっている

FLiRT COVID Variants: What Are the Symptoms?

2024年5月8日(水)15時40分
パンドラ・デワン

新型コロナウイルスは今も変異を続けている Corona Borealis Studio/shutterstock

<アメリカの下水道で発見されたオミクロン株の仲間が、この夏流行するのではないかと懸念されている>

科学者たちは、この夏、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の波がきそうだと警告している。アメリカで、かつて大流行したオミクロン株の亜系統(遺伝子配列が異なるウイルス)が広がっていることがわかったからだ。

【動画】なぜこんなに遠い? ロシアウォッチャーの間で話題になった、プーチンと聴衆の距離

これらの新しいウイルスは、スパイクタンパク質における変異の位置から「FLiRT(フラート)」と総称されている。FLiRTは、これまでの亜系統と何が違うのだろうか? 本当に懸念すべきものなのだろうか?

 

英ウォーリック大学の分子腫瘍学教授を務めるウイルス学者のローレンス・ヤングは本誌の取材に対し、「FLiRTは米国の下水道で初めて確認されたが、正確な起源はわからない」と述べた。「(現在)米国内外で広がっている」

米疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、アメリカではいま新規感染の25%がFLiRTの一種のKP.2によるものだ、とヤングは言う。「このKP.2が夏の感染の波を引き起こさないか懸念している」

初期の証拠によれば、KP.2はこれまでの亜系統より感染力が強そうだが、危険性が高いかどうかを判断するのは時期尚早だ。

「この亜系統の拡大を監視すべきだが、今では検査もあまり行われていないことを考えると難しい」とヤングは話す。「新型ウイルスの拡大と免疫力の低下は、特に最も弱い立場にある高齢者や免疫不全者にとって問題だ」

「現在入手可能なワクチンは、これらの新しい亜系統に完全には適合しないが、これまでの亜系統と同様、ワクチンのブースター接種にはいくらかの防御効果が期待できる」とヤングは言う。「今後数カ月間、FLiRTの亜系統が小さな感染の波を引き起こす可能性はある」

わかっている限りでは、症状は既存の亜系統と類似している。CDCは以下のような症状を挙げている:

・発熱や悪寒
・せき
・息切れ
・倦怠感
・筋肉や体の痛み
・頭痛
・味覚や嗅覚の喪失
・喉の痛み
・鼻水
・吐き気や嘔吐
・下痢

FLiRTから身を守るには、人との距離が近い場所ではマスクを着用するなど「通常の予防策」を推奨する、とヤングは言う。

(翻訳:ガリレオ)

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中