ニュース速報
ビジネス

アングル:高市トレード、初動は海外主導の大型株買い 「副作用」に警戒も

2026年01月14日(水)13時37分

写真は高市首相。2025年12月、東京証券取引所で撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon

Noriyuki ‍Hirata

[東京 14日 ロイター] - 高市早苗首相による早期解散観測をめ‌ぐり、「高市トレード」への思惑から日経平均などの指数が高値を更新している。初動の買いは大型株中心で、海外勢による資金流入が意識される一方、個人投資家は利食いを先行させ、全面高とはなっていない。足元で一段と進む金利上昇や円安といった政策‌の「副作用」への警戒感もくすぶっている。

<全​面高ではない最高値>

早期解散の思惑が高まる東京市場で、日経平均とTOPIXがともに最高値を更新する中、値幅の割に値上がり銘柄数が少ないことが注目されている。東証プライム市場の値上がり銘柄数は13日が66%、14日も7割程度となっており、全面高の目安とされる9割とは距離がある。

投資主体別の動向からは「海外勢主導の大型株買い、個人の利益確定売り」の構図がうかがえると松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは分析している。

‌物色動向をみると、政権が打ち出す17の戦略分野に含まれるAI(人工知能)・半導体関連でアドバンテスト、東京エレクトロンといった日経平均への寄与度の高い半導体関連株が指数を押し上げている。同じく戦略リストに連なる防衛関連株も三菱重工業などがしっかり。高市トレードに基づく円安はトヨタ自動車など輸出株の追い風となり、金利高はメガバンク株を支援している。

りそなアセットマネジメントの戸田浩司シニアファンドマネージャーは「海外勢には日本株を買わないと乗り遅れるとの焦りもあるようだ」との見方を示す。これらの大型株は、海外投資家がベンチマークとするMSCIジャパン指数のウェート上位銘柄でもあり「とりあえず日本株を買わなければならないような局面で、海外勢に物色されやすい」とフィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドは話す。

一方、個人投資家は、半導体関連や防衛関連、大手銀行株といった、大きく上昇​した銘柄を中心に利益確定売りが目立つと松井証券の窪田氏は指摘する。その確定した利益を中小型株に振り⁠向けるような個人投資家の動きは目立たないという。「大型株の値動きが良い中では、中小型株には目が向きにくい」(松井の窪田氏)という‍。

<政策の「副作用」を警戒>

一方、物色動向には政策の「副作用」への警戒もにじむ。神戸物産やニトリホールディングスなどの小売セクターは13日に逆行安となった。高市トレードによる円安で「輸入コスト増や物価高による消費減退が意識されているようだ」と岩井コスモ証券の嶋田和昭チーフストラテジストは話す。

13日に大きく上昇した自動車株は14日には上値が重くなった。円が159円台に下落する中、「為替介入への警戒感がうかがわれる」(フィリップの増沢氏)という。高市トレードで金利‍が上昇基調にあることは、グロース株を中心に逆風ともみられている。

17の戦略分野に含まれているコンテンツ株もさえない‍銘柄が多い。‌サンリオは日中関係の悪化懸念を背景に軟調地合いが継続。選挙を通じて高市政権の基盤が強化されれば、中‍国側の警戒が高まりかねないとの懸念がくすぶる。百貨店株などインバウンドへの影響が警戒される銘柄群の一角も上値の重さが意識される。

ゲーム機に用いられるメモリー価格の高騰によるコスト増が懸念され、任天堂やソニーグループは上昇相場に乗り切れていない。早期の解散期待は、こうしたマイナス要因を打ち返すほどにはなっていない。

<巻き戻しリスク>

株価急騰は、巻き戻しリスクと背中合わせでもある。

解散・総選挙への思惑が継続する限り、スピード調整を挟みながらも株高基調は継続するとみ⁠られるが、あくまで期待先行の相場でもある。

りそなAMの戸田氏は、物価との比較で長期金利の2%台はまだ許容範囲とみている一方、過度な円安はインフレ懸念を高めて金利上昇を促しかねず「円安を起点に財政懸念として海外勢からネガティブに⁠捉えられ始めると株売りの口実になりかねない」と指摘する。

実際に解散し‍たとしても、選挙で自民党が勝利できるかは現時点で不透明でもある。単独過半数などが目線になるとみられ「(自民党が獲得する)議席数次第では選挙後の株価の一段高もあり得るが、議席数が伸びない場合は、先行した期待分の反動安があってもおかしくない」と岩井コスモの嶋田氏はみている。

相場巻​き戻しの際の目線のひとつになるとして「初動の物色は重要になる。よくみておく必要がある」と嶋田氏は話している。

◎MSCIジャパン指数 ウェート上位銘柄の値動き

コード 銘柄名 14日騰落 13日騰落

7203.T トヨタ自動車 0.03% 7.47%

8306.T 三菱UFJ FG 1.78% 5.30%

6758.T ソニーグループ 0.47% -1.06%

6501.T 日立製作所 0.88% 3.80%

8316.T 三井住友FG 1.68% 3.08%

9984.T ソフトバンクグループ -4.95% 4.32%

8035.T 東京エレクトロン 2.49% 8.23%

6857.T アドバンテスト 5.41% 8.54%

8411.T みずほFG 1.75% 5.39%

6098.T リクルートHLDG -0.08% -1.69%

出所:MSCI、LSEGデータ。各上位銘柄は2025年12月31日時点。14日騰落は午後1時時点。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で

ワールド

イスラエル首相、トランプ氏と11日会談 イラン巡り

ビジネス

EXCLUSIVE-米FRB、年内1─2回の利下げ

ワールド

北朝鮮、2月下旬に党大会開催 5年に1度の重要会議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中