焦点:問われるFRBの独立性、理事解任訴訟 最高裁で年明け口頭弁論
写真は連邦準備理事会本部の外観。2022年6月、ワシントンで撮影。REUTERS/Sarah Silbiger
Jan Wolfe
[ワシントン 13日 ロイター] - 米連邦最高裁判所は、トランプ大統領によるクック米連邦準備理事会(FRB)理事解任訴訟の口頭弁論を来年1月21日に開く。最高裁判事は現在、保守派6人、リベラル派3人で構成される。保守派判事は、トランプ氏にFRB高官の解任権限を与えることには消極的なメッセージを発しており、口頭弁論ではFRBの独立性が論点となりそうだ。
FRBは複数の規制当局と同じく、大統領の直接支配から独立した機関として、議会によって創設された。最高裁は5月、そうした機関の中でもFRBは独自の性質を持ち、他と一線を画す存在だとの判断を下した。それにもかかわらずトランプ氏は8月、クックFRB理事の解任に踏み切り、FRBの独立性を巡る重要な法廷闘争の火ぶたを切った。
トランプ氏は1月の2期目就任以来、様々な方法で大統領権限の限界を試してきた。最高裁はこれまで、他の政府機関高官の解任から移民政策、対外援助削減まで、トランプ氏の措置を認める判断を相次いで下した。10月、最高裁はクック理事については即時解任を認めず、来年1月に審理するとした。
<FTC委員解任の裁判>
最高裁は12月8日、トランプ氏が連邦取引委員会(FTC)の民主党委員、レベッカ・ケリー・スローター氏を解任したことを巡る訴訟の口頭弁論を行った。スローター氏は解任に異議を唱えて訴訟を起こしたが、保守派判事らはトランプ氏が権限を逸脱していないとの判断を下す可能性を示した。
スローター氏訴訟の弁論内容から判断すると、保守派判事らは1914年に成立した法律を無効化する構えだ。同法では、大統領がFTC委員を解任できるのは「職務怠慢、職務放棄、不正行為」があった場合に限られ、政策上の相違を理由に解任することはできない、と定めている。法律無効化の判決が下れば、1935年の最高裁判例が覆され、大統領は議会が独立性を求めた他機関の長も解任できるようになる可能性がある。
1913年に議会がFRB創設のために可決した法律にも同様に、職員のポストを保護する規定がある。判事らは、政策上の相違だけを理由に大統領がFRB高官を解任できるようにする新たな法的枠組みを生み出すことを懸念しているようだ。共和、民主両党の議員や経済学者らは長年、金融政策が政治的な気まぐれに左右されないよう、FRBの独立性が不可欠だと認識してきた。
トランプ氏はクックFRB理事の解任には正当な理由があると述べ、理事就任前の住宅ローン詐欺を非難した。クック氏は詐欺を否定し、トランプ氏が主張した解任理由は金融政策スタンスであり、詐欺の主張は口実だと指摘している。
一方、最高裁は5月、トランプ氏による国家労働関係委員会(NLRB)委員の解任を認める判断を下した。しかし最高裁はこの時、FRB高官解任についても大統領に同様の権限を与えたと解釈すべきではない、と明言している。
保守派のブレット・カバノー判事は長年、連邦機関の権限抑制を求めてきたが、過去にFRBの地位は特別だと示唆している。2009年の論文でカバノー氏は「一部の状況下では、特定の機関を大統領の直接監視、もしくは管理から隔絶する価値があるかもしれない。FRBは、金利設定と通貨供給量の調節を通じて短期的な米経済の機能に直接影響を及ぼす力を持つゆえに、その好例かもしれない」と指摘した。
<FRBは特別>
ロジャー・ウィリアムズ大学のピーター・マーギュリーズ法学教授は「裁判所は明らかにFRBを特別視している」とし、「裁判所は、政府が機能するためには独立したFRBが不可欠だと確信していると思う」と述べた。
米商工会議所は法廷意見書で、FRBは他の独立機関とは異なるため、スローター氏解任でトランプ氏に有利な判決が下されたとしても、FRBの独立性が脅かされる必要はないと主張した。
一方、FRBの独立性を主張する見解は、FRBの歴史と構造を歪曲(わいきょく)するものだと言う法律専門家もいる。ワシントン大学・法科大学院のアンドレア・カッツ教授は、スローター氏解任を巡る訴訟の最終判断において、裁判所はFRBについて例外を設ける可能性が高いと予想。ただ、判事らは、そうすることの原則的な法的根拠を明示していないと言う。
カッツ氏は「歴史的事実として、いわゆる『FRBの例外扱い』は知的に擁護できない」とし、「連邦準備制度は理事会によって運営されており、実際には複数委員からなる他の委員会と同じに見える」と説明。「カバノー判事はFRBの独立性を前提としているようだ」が、その根拠は「説明されていない」と指摘した。





