アングル:債券投資家が中期ゾーン主体にポジション修正、来年のFRB利下げは小幅と想定
写真は米連邦準備理事会(FRB)のビル。9月16日、ワシントンで撮影。REUTERS/Aaron Schwartz
Gertrude Chavez-Dreyfuss
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 債券投資家は、来年の米連邦準備理事会(FRB)による利下げ幅が従来の想定より小さくなると予想し、より長期の債券を組み入れる「デュレーション(平均償還年限)長期化」を巻き戻して中期ゾーンに乗り換えるポジション修正に動きつつある。
根強い物価高を巡る懸念や、米経済がより底堅さを発揮するとの観測が背景だ。
9─10日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げて3.50─3.75%にすることを決めるとの見方が広がっている。
ただシュワブ・センター・フォー・ファイナンシャル・リサーチの債券調査戦略責任者を務めるコリン・マー-チン氏は「われわれは政策金利の下げ幅が浅くなると見込んでいる。主な理由は物価上昇率がなお高いためで、それはFOMCで投票権を持つ多くのメンバー、特に来年投票権が回ってくる何人かが懸念している」と指摘した。
バークレイズは、FRBが来年3月と6月に25ベーシスポイント(bp)の追加利下げに動くと予想。ドイツ銀行は来年前半に金利を据え置いた後、9月になってよりハト派的になるとみられる次期議長の下で利下げを再開すると見込んだ。
HSBCは、今週利下げが決定された後は、向こう2年間政策変更を見送ると予想している。
FRBの利下げ局面において投資家は通常、10-30年ゾーンの債券購入を拡大する。金融緩和を受けた短期ゾーンの利回り低下に伴って、より残存年限の長いゾーンに手を伸ばし、金利がさらに下がる前にリターンを確保しようとするからだ。
こうしたデュレーション長期化戦略は、利下げ局面で相対的に高い運用成績を収めてきた。
ところが物価上昇率がFRBの目指す2%を上回り続け、債券投資家が現在の推計で3%前後とされる中立金利水準の上振れを想定するようになると、長期ゾーンの利回り低下余地が限られてしまう。
政策の不確実性と根強い物価高が存在するこのような事態では、中期ゾーンへの投資がより魅力的なヘッジ手段になるという。
HSBCの米金利ストラテジスト、ディラジ・ナルーラ氏は「われわれは引き続きイールドカーブの中で中期を選好している。現在織り込まれている状況を踏まえると、短期ゾーンにポジションを構築すると非常に急激なキャリーコスト(維持コスト)が発生するからだ」と述べた。
ナルーラ氏は「関税が主導する物価上昇はこれまでのところ市場が予想しているほど深刻ではないが、全体的にディスインフレ(の流れ)がFRB目標の2%ではなく3%近くで停滞してしまった。それは政策(金利)を少なくとも中立近辺に維持するかなり強いインセンティブになる」と付け加えた。
長期ゾーンにも固有の問題がある。
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのポートフォリオマネジャー兼米債券責任者、グレッグ・ウィレンスキー氏は「財政や予算面の心配といったさまざまな要素から、長期ゾーン(保有)に自信を持つのは難しい」と語る。
ウィレンスキー氏によると、ジャナス・ヘンダーソンの債券ポートフォリオのデュレーションは5年超で、以前は5年債より2年債をオーバーウエートしていたが、今は5年債をより多く組み入れているという。
JPモルガンが行った債券投資家顧客に対する最新調査でも、ベンチマーク比でデュレーションを長期化している向きの割合は1日時点で9ポイント低下した。
9─10日のFOMCについては、メンバーの政策金利予想の分布を示す「ドットチャート」にも注目が集まるだろう。
9月に公表された前回のドットチャートでは、政策金利予想の中央値が今年末に3.6%、来年末に3.4%、27年末に3.1%となっていた。
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