カンザスシティー連銀総裁、追加利下げに慎重 現行政策「適切」

10月6日、 米カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁(写真)は米連邦準備理事会(FRB)は過度な引き締めと過度な緩和という2つのリスクの間でかじ取りをする中で過度なインフレ高騰の危険性に引き続き焦点を当てるべきだとし、さらなる利下げに慎重な姿勢を示唆した。ワイオミング州ジャクソンホールで2024年8月撮影(2025年 ロイター/Ann Saphir)
[6日 ロイター] - 米カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁は6日、米連邦準備理事会(FRB)は過度な引き締めと過度な緩和という2つのリスクの間でかじ取りをする中で過度なインフレ高騰の危険性に引き続き焦点を当てるべきだとし、さらなる利下げに慎重な姿勢を示唆した。
シュミッド総裁はアナリストの業界団体であるCFA協会のカンザスシティー支部で講演を行い、FRBが9月に実施した25ベーシスポイント(bp)の利下げについては、労働市場の減速を考慮すれば適切なリスク管理だったとして支持した。
しかし、労働市場全体がなお健全であることが幅広い指標で示される一方、インフレ率は依然として高すぎるとし、サービス部門のインフレ率はここ数カ月で3.5%前後に落ち着き、FRBの目標である2%を大きく上回っていると指摘。
「懸念すべき兆候の一つは、価格上昇がより広範囲に及びつつあることだ」とし、公式インフレ統計で追跡しているカテゴリーのうち価格が上昇している分野は年初時点の7割から8月にはほぼ8割に拡大したと述べた。
また「関税がインフレに与える影響は全体として比較的小さいと予想しているが、それは政策金利を積極的に引き下げるべきという兆候ではなく、政策が適切に調整されていることを示す兆候だとみている」と語った。
同氏はFRBが労働市場を支援するために金利を引き下げればインフレ加速のリスクがあるが、インフレを抑えるために金利を高く設定すれば失業率が上昇するリスクがあるというトレードオフに直面しているとも指摘。
「制約は、相反する目標をいかにバランスさせるかという難しい判断につながるが、FRBはインフレと雇用に関してこうした難しい判断を迫られている」とし、「この制約のバランスを取る上で、FRBはインフレに関する信頼性を維持しなければならないというのが私の見解だ」と述べた。
経済には勢いがあり、通常なら金利が高い局面で弱まる企業投資が人工知能(AI)関連ソフトウエアへの支出によって押し上げられているとしたほか、株式市場は過去最高値圏にあり、社債スプレッドは縮小していると指摘した。
その上で「経済と金融市場の状況を踏まえると、現在の政策スタンスはわずかに景気抑制的であるにすぎず、適切な位置にあると考えている」と述べた。
さらなる利下げがインフレを再燃させる可能性があるとの懸念は、ダラス地区連銀のローガン総裁やクリーブランド地区連銀のハマック総裁らも示している。これに対しミラン理事は9月、今後数回の会合でより大幅な利下げを行うよう繰り返し求めた。
この見解はミラン氏独自のものだが、ボウマン副議長(金融監督担当)やサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁らも、労働市場のさらなる悪化を防ぐため追加利下げの必要性を支持している。最近の指標では月次の雇用増加が急速に鈍化していることが示されている。
シュミッド総裁はこうした懸念を踏まえ、企業はトランプ大統領の関税政策の行方を見極め、将来の労働力需要に対するAIの影響を探っており、採用を控えているとの見方を提示した。