自民新総裁で円安・株高の見方、「高市トレード」再始動か

自民党の総裁選挙で高市早苗前経済安保担当相が勝利し、金融市場ではサプライズとの受け止めが出ている。写真は2024年2月、東京で撮影/Issei Kato)
Noriyuki Hirata Atsuko Aoyama Mariko Sakaguchi
[東京 4日 ロイター] - 自民党の総裁選挙で高市早苗前経済安保担当相が勝利し、金融市場ではサプライズとの受け止めが出ている。週明けの相場での初期反応は金融緩和や財政拡張的な政策への思惑に基づく「高市トレード」が再始動し、円安、株高との見方が聞かれる。一方、債券は見方が割れている。
総裁選の終盤にかけて高市氏の勝利は金融市場のメインシナリオから後退していただけに「株価にはポジティブサプライズといえる。短期的には日本株は上昇で反応しそうだ」との見方を、りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは示す。
自民党初の女性総裁となり「投資家に変化を強く意識させる可能性がある」と武居氏はみている。構造改革を期待して海外勢が現物株を買ってくるようなら、中長期の緩やかな上昇基調が見込めそうだといい、ショートカバーが誘発されれば、上昇に勢いがついて日経平均は4万7000円も視野に入るという。
為替市場でも「まずは反動が出るだろう」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミスト)との見方がある。「高市トレードのような形で週が始まり、ドル/円は149円台か、150円をうかがう展開を予想している」(上野氏)という。
長期金利の初期反応は、中短期金利の低下と超長期金利の上昇の綱引きになりそうだ。ニッセイ基礎研の上野氏は、超長期金利の上昇の方に引っ張られる形で長期金利がやや上昇するとみるが、財政拡張観測がある一方、利上げに慎重な姿勢が意識される中での金利上昇となるため、為替には円安圧力になると想定している。
一方、三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは「中短期ゾーン主導で買い戻され、長期金利は1.60%台を下回ってくるだろう」と指摘する。超長期ゾーンについては、金利上昇圧力はそこまで大きくはならないとみている。
<日銀利上げ期待は後退か>
日銀の早期利上げの織り込みは後退しそうだ。市場では10月利上げの可能性を6割程度織り込んでいるが、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日銀としては失敗した場合に政治介入を招く可能性があるため、遅らせるだろう」との見方を示す。
三井住友銀の宇野氏は、高市氏の「方向性は政府が決めて、手段は日銀」との発言を踏まえると、金融引き締めに対して一定の歯止めがかかるとみている。ただ「円安が進行すれば、政府が利上げを容認するハードルは下がる」(ニッセイ基礎研の上野氏)との見方もある。
政策の実現可能性という点で注目されるのが、野党との連携だ。市場では高市氏と距離感の近い国民民主党に接近するとの見方が多い。積極的な財政政策が意識されやすく「相場が落ち着いてくると株価の割高感に目が向きかねず、長期金利の動向にも目配りが必要になる」(りそなHDの武居氏)との声がある。
初期反応は株高が見込まれるとしても、短期筋が中心となる先物主導の上昇の場合「逃げ足も速いため注意したい」と、武居氏は話している。