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焦点:韓国中古車輸出が急成長、ロシアや中東向け好調で米関税の影響緩和

2025年10月04日(土)10時54分

9月30日、 韓国西部仁川。かつて遊園地があった海沿いのぬかるんだ敷地に何万台もの自動車が並べられ、輸出に向けた出荷作業を待っていた。写真は仁川の中古車輸出拠点で8月撮影(2025年 ロイター/Kim Soo-hyeon)

Ju-min Park

[仁川(韓国) 30日 ロイター] - 韓国西部仁川。かつて遊園地があった海沿いのぬかるんだ敷地に何万台もの自動車が並べられ、輸出に向けた出荷作業を待っていた。

作業員たちは暑い屋外での作業で汗びっしょりになりながら、24時間体制で車をコンテナトラックに積み込み、固定する作業を続けている。ここ仁川は、韓国最大の中古車輸出拠点だ。

毎月約100台の中古車を出荷している輸出業者のケビン・ソルさんは、「自分たちのビジネスが輸出の花形だと自ら言うのは恥ずかしい気がする。でも、この業界は数字を伸ばし続けているので、国の輸出に貢献していると思う」と話した。

トランプ米大統領が25%の関税を発表して以来、韓国の対米自動車出荷台数は6カ月連続で減少している。

しかし、産業通商資源省と税関のデータによれば、韓国の自動車輸出は3カ月連続で増加。総輸出台数の4分の1、額では13%を占める中古車の記録的な伸びが、この増加に寄与している。

同省によると、韓国の8月の自動車輸出額は前年同月比9%増の55億ドル(8200億円)で、月間では過去最高を記録した。韓国中古車流通研究所によると、同月の中古車輸出は35%増の7億1150万ドルに急増した。

現代自動車 や起亜自動車の中古車にロシアや中東で大きな需要があることや、ウォン安が成長を後押ししているという。

「米国への輸出が私たちのビジネスに占める割合は大きくない。他国からの需要は旺盛で、関税はそれほど痛手にはなっていない」と、ソルさんは話した。

<中古車価格への関税の影響>

政府のデータや輸出業者によれば、中東、中央アジア、ロシアに輸出される中古車の大半は韓国から輸出されている。これらの市場では、左ハンドルの韓国車は、ライバルで右ハンドルの日本車よりも魅力的になると輸出業者は言う。

韓国の最大の新車輸出市場である米国は、韓国車に25%の関税を課しており、15%の日本車や欧州車に比べて不利になっている。

米国の関税は新車市場にとってはマイナスだが、中古車のさらなる需要と価格上昇につながる可能性があると指摘するのが、前出の中古車流通研究所のシン・ヒョンド所長だ。

「米国の新車関税が上昇すれば、自動車価格は世界的に上昇する。その場合、中古車価格もそれに追随する可能性が高い」と、シン氏は指摘した。

シン氏によると、今年上半期、韓国の中古車輸出は72%増の39億ドルに急増し、43万7151台が海外に出荷された。

また、上半期の中東への販売台数は中古車が新車を上回り、ロシアへの月平均販売台数は40%増加したという。

<貧弱な輸出インフラ>

ウクライナ戦争の勃発以来、ロシアやキルギスなどからの中古車需要が急増している。

ウクライナ侵攻を受け、日本は2023年からロシアへの中古車輸出を制限し、小型車以外はロシアへの直接輸出ができなくなった。

韓国も24年に制裁を科したが、大型スポーツ多目的車(SUV)など2000cc以上のエンジンを搭載した新車または中古車のみが対象で、これらの車種も一部が中央アジア諸国を通じてロシアに輸出されていると市場関係者は述べた。

市場が急成長するシリアが7月に中古車輸入を禁止したが、韓国の中古車輸出は今年、台数・金額ともに過去最高を更新する見込みだと専門家は予想する。

一方輸出業者らは、仁川などの輸出港の脆弱なインフラが原因で輸出の伸びが頭打ちになりかねないと懸念する。仁川の輸出拠点には、未舗装のグラウンドに即席の事務所や不十分な設備があるだけだ。

輸出業者のパク・ヨンファ氏は、「民間業者がこのような未舗装の場所を借りて車を置いている。夏場は、バイヤーが泥に足を取られて車を確認できないほどひどい状況になる」と話した。

与党「共に民主党」のホ・ジョンシク議員は4月、中古車輸出業者の登録制度を確立し、専用の輸出拠点を整備する法案を提出した。

政府のデータによると、2025年上半期に中小企業の輸出額で最も急成長した産業は中古車と化粧品だった。

「中古車輸出はすでにわが国の主要輸出品目のひとつとなっており、政府は政策を通じて中古車輸出産業の管理と振興に乗り出すべきだ」とホ氏は述べた。

ロイター
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