四半期末控え短期流動性なお潤沢とNY連銀、多少の金利変動「健全」

9月29日、 米ニューヨーク連銀で金融調節に関する市場動向の監視・分析作業を統括するジュリー・リマッシュ氏は資金需給が引き締まる四半期末を控えた短期金融市場について、流動性は依然として潤沢だと述べた。ニューヨーク連銀前で2023年3月撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)
Michael S. Derby
[29日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀で金融調節に関する市場動向の監視・分析作業を統括するジュリー・リマッシュ氏は29日、資金需給が引き締まる四半期末を控えた短期金融市場について、流動性は依然として潤沢だと述べた。また当局には市場の一時的な混乱を収める手段が整っており、ある程度の金利変動は市場にとって健全な現象だと強調した。
リマッシュ氏は、米連邦準備理事会(FRB)としては短期市場に多少の混乱が起きても驚きはないと説明。FRBの金利調節は機能し、全般的な金利形成に強い影響力を発揮しているが、四半期末など銀行がバランスシート最適化を図る局面では短期金利は上昇しがちだと指摘した。
その上で四半期末前後のこのような金利上昇は「一定限度内にある限りは正常な状況で懸念要素ではない。われわれがバランスシートの正常化を続ける中でまさに期待している事象だ」と明言した。
<SRFに金利上昇圧力抑制効果>
リマッシュ氏は、短期市場の安定を目的としてFRBが導入した常設の資金供給制度「スタンディング・レポ・ファシリティー(SRF)」について、放置しておくと金利調節機能を脅かしかねない金利上昇圧力を初期段階で抑えることができると自信を示した。
2021年に創設されたSRFはこれまで本格的な利用がなかったが、ライトソンICAPの試算では30日に残高が500億ドル前後まで急増する見込みだ。
ただSRFがFRBの期待通りの働きをしてくれるかどうかは分からないとの声も聞かれる。
キュアバチュア・セキュリティーズのスコット・スカーム氏は、現在のレポGC取引(担保債券の銘柄を特定しない取引)レートはSRFの適用金利より4.25ポイントも高いので、本来なら金融機関からのSRF利用が既に殺到しているはずなのに、実際はそれが起きていない点から、市場はSRFの有効性を信頼していないことを意味するとの見方を示した。
またFRBはSRFを積極的に利用するよう呼びかけているものの、一部の金融機関は資金調達力が弱いとみなされるのではないかと懸念するかもしれない。
<QT打ち切り論に冷や水>
一方、足元で短期市場の流動性が潤沢と強調したリマッシュ氏の発言からは、FRBが進めるバランスシート縮小(量的引き締め=QT)の近く打ち切る必要がないと同氏が考えている様子もうかがえる。
FRBはコロナ禍とその後の金融システムを落ち着かせ、景気を刺激するための金融緩和措置によって一時9兆ドルに膨らんだ保有資産の圧縮を続け、現在の資産規模は6兆7000億ドルとなっている。
これまでのQTは、短期市場の余剰資金を吸収する側面が強かったが、今後は基調的な流動性水準を減らす取り組みになるため、市場には予想外の圧力が発生する機会が増大するとみられている。