仏当局、日産の欧州法人を検査へ サプライヤーへの支払い状況確認=書簡

9月24日、日産自動車が欧州のサプライヤーに期日通り支払いをしているかどうかを確認するため、フランスの競争当局が10月中に同社の欧州法人を検査することが分かった。写真は日産のロゴのイメージ。7月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
Daniel Leussink
[東京/パリ 24日 ロイター] - 日産自動車が欧州のサプライヤーに期日通り支払いをしているかどうかを確認するため、フランスの競争当局が10月中に同社の欧州法人を検査することが分かった。日産の欧州法人に送られた書簡をロイターが確認した。
同社に届いた8月19日付の書簡によると、検査は10月7日に実施予定。フランスの経済・財務省は日産の欧州法人に対し、企業が支払い期限を順守しているかどうかを点検する定期的な取り組みの一環として精査すると通知した。不正行為や規則違反の疑いが認められたわけではない。
ただ、仮に違反が確認された場合、罰金などの行政処分につながる可能性があると書簡は伝えている。日産の欧州法人は、10月7日の検査に先立ち、2024年度の会計・支払い記録、その他の書類を提出するよう指示されている。
日産の広報はロイターの取材に対し、「欧州日産自動車会社(NAE、欧州統括会社)は2024年の会計年度でのフランス国内における欧州本社からのサプライヤー支払いに関わる情報提供の要請をフランス当局から受けた」と認めた。その上で、「当該要請において不正行為は示されておらず、当社は当局と全面的に協力し、必要な情報と説明を提供する用意がある」とコメントした。
フランス当局の広報担当者はコメントを控えた。
フランスは企業間の支払い遅延に関する調査を強化している。競争当局は今年上期に409社を調査。そのうち40%近くで違反を発見した。4700万ユーロ(約81億円)の罰金を徴収した。昨年は5月までに約28%の企業で不正を発見し、約3000万ユーロ(約52億円)の罰金を科した。
ロイターは6月、日産が欧州のサプライヤーに支払いの延期を求めたと報じたが、今回のフランス当局の調査と関連があるかどうかは分かっていない。関係者らによると、欧州連合(EU)諸国と英国のサプライヤーに対し、支払いの延期を受け入れる代わりに利息を追加して後日支払う選択肢を提示した。
欧州では資金繰りのために企業がサプライヤーに支払期限の延長を要請することは珍しくないが、EUの行政執行機関である欧州委員会の資料によると、中小のサプライヤーに負担がかかることを懸念しており、EUにおける倒産件数の約4分の1は支払い遅延に関連している。
貿易信用保険会社アトラディウスが5月に実施した調査では、欧州の西側諸国における企業間取引の請求書の約47%が支払い期限を過ぎていることが判明した。フランスではこの割合が52%とさらに高い。
フランスでは、請求書の発行から60日以内に代金を支払わなくてはならない。違反すると1件あたり最大200万ユーロ(約3億4800万円)の罰金が科される。
日産は現在、従業員を2万人削減するとともに、工場を17から10に減らすなどの再建計画を進めている。26年度までに24年度の実績比で固定費2500億円、変動費2500億円を削減し、自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指している。
日産によるサプライヤーへの支払いについては日本では問題となった。昨年3月、「割戻金」の名目で一部下請け業者への支払いを減額していたことが下請法違反に当たるとして、公正取引委員会から再発防止などの勧告を受けた。日産は約2年間、下請け事業者36社に対し、一度決まった支払い代金から割戻金として総額約30億円を減額。日産は減額分をすでに下請け業者へ支払い、割戻金の運用を廃止している。
(ダニエル・ルーシンク 取材協力:Guillaume Gilles、白木真紀)