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インタビュー:経済・物価見通し上方修正か、10月利上げ排除されず=安達元日銀委員

2025年09月24日(水)15時39分

元日銀審議委員の安達誠司氏は9月24日、ロイターのインタビューで、日銀の利上げ再開は来年3月以降がメインシナリオだが、10月の展望リポートで経済・物価の見通しが引き上げられる可能性があり、10月利上げの可能性も排除されないとの見方を示した。写真は日銀本店。1月23日撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada Leika Kihara

[東京 24日 ロイター] - 元日銀審議委員の安達誠司氏は24日、ロイターのインタビューで、日銀の利上げ再開は来年3月以降がメインシナリオだが、10月の展望リポートで経済・物価の見通しが引き上げられる可能性があり、10月利上げの可能性も排除されないとの見方を示した。政策金利を0.75%に引き上げても中立金利よりまだ低く、実体経済への影響はないと述べた。

安達氏は、4―6月期の実質国内総生産(GDP)が日銀の想定より強かったことで2025年度の実質GDPの見通しを引き上げる可能性が高いとの見方を示した。「4―6月期GDPの(上振れ)分は上方修正しないといけない」と指摘。成長率の上方修正を前提にすれば物価の伸び鈍化は限定的となり、2%で定着するシナリオに変化する可能性があると話した。

前回7月の展望リポートでは、25年度の実質GDPの政策委員見通し中央値は前年度比0.6%増、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は2.7%上昇だった。

安達氏は、25年度の予測数値を月次ベースに直すと、日銀は来年1―3月期にコアCPIの伸び率が1.9%―2.0%程度に落ち込むと想定していることになると指摘。7月時点の見通しではトランプ関税の影響による景気下押しが物価を押し下げることが考慮されていたが、コメ価格の高止まりなどに加え、4―6月期の実質GDPを受けて「実体経済の見通しを上方修正すれば、インフレ率は2%以上になる」と話した。その上で「物価が2%に落ち着くなら、利上げする手もある」とした。

8月の全国消費者物価指数で、コアCPIは前年同月比2.7%上昇。安達氏は、ここまでは日銀の想定通りに進んでいると述べた。日銀は7月の展望リポートで、コメをはじめとする食料品価格の高騰を踏まえ25年度の物価見通しを大幅に引き上げた経緯がある。

安達氏の推計によれば、基調的な物価上昇率は現状1.7%強。1月時点は1.5%程度で、2%に向かって上昇してきているという。10月1日発表の9月調査日銀短観で、企業の5年後の物価見通しが前回の2.3%上昇から2.5%上昇まで引き上がれば「基調的な物価上昇率は2%に行くとみられる」と話した。

安達氏は、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない自然利子率の推計値は若干上がってきているとし、「25bp利上げしても、中立金利より政策金利がまだ低い状態で超金融緩和が続いているというロジックは立てられる」と述べ、追加利上げが正当化される状況との認識を示した。

もっとも、安達氏は、金融政策を決める政策委員会の中で植田和男総裁が景気や物価に「最も弱気だ」とみている。植田総裁は米国の関税による経済の下振れリスクへの警戒感が非常に強いとし、19日の記者会見でもリスク評価を変えるところまではいっていないと述べた。リスク評価が10月会合でいきなり変わる可能性は低いことから「10月会合での利上げはないように思う」と予想。企業の設備投資動向や来年の賃上げを10月会合で見極めるのは難しく、利上げ再開は来年3月以降をメインシナリオとした。

ロイター
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