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マクロスコープ:狭まる財政余力、国債費要求が過去最大32.3兆円

2025年08月26日(火)14時48分

 8月26日、2026年度予算要求で国債費が過去最大となる32兆3865億円に膨らんだ。写真は円紙幣。2017年6月撮影(2025年 ロイター/Thomas White)

Takaya Yamaguchi Tamiyuki Kihara

[東京 26日 ロイター] - 2026年度予算要求で国債費が過去最大となる32兆3865億円に膨らんだ。社会保障費や防衛費も増額含みで、物価高対策など看板政策への経費を捻出するには、歳出構造の見直しが避けられない。メリハリの効いた予算編成にこぎ着けるか、年末にかけ正念場を迎える。

<跳ね上がる積算金利>

近く財務省が要求する国債費のうち、借金返済に充てる債務償還費は19兆3104億円となる。日本の債務残高は対国内総生産(GDP)比で240%前後と、主要7カ国(G7)で突出して高い。

26年度予算では、25年度予算比で9.3%増となる債務償還費を要求する。ロイターが原案を確認した。

一方、巨額債務への利払いも膨らむ。26年度は、25年度予算比24.0%増の13兆0435億円の利払い負担が生じると想定する。

長期金利が1.5%前後で推移する現状を踏まえ、危機時に必要とされる1.1%分を加算した積算金利を想定。26年度は2.6%と、17年ぶりの高水準とする。25年度は要求段階で2.1%(予算時は2.0%)としていた。

<「看板政策」後手に>

国債費を除く政策経費でも、引き続き増額圧力が強い。

予算全体の3分の1を占める社会保障費は、高齢化に伴う増加に歯止めがかからず、予算額が40兆円に迫る勢い。さらに防衛力強化に伴う経費の積み増しも予想され、政府内には「(全体の要求額が)前年を上回るのは確実」(関係者)との声がある。

7月の参院選に先立ち、与党は物価高対策として現金を一律給付する方針を掲げた。ただ、参院選敗北に伴う政権求心力の低下で政策調整は宙に浮き、実現に向けた調整は進んでいない。

看板政策への予算付けが後手に回り、膨張する歳出とは裏腹に「(看板政策である)実質賃金のプラス定着が後ずれしかねない」(前出と別の政府関係者)との声も漏れる。

<歳入面でも残る課題>

衆参ともに過半数を割って初めての予算編成となる年末にかけては、歳入面での課題も残る。

与野党6党が協議を重ねるガソリン税の暫定税率廃止では、廃止に伴う税収減1.5兆円を補う財源確保が焦点となるが、野党各党は「新たな負担増は受け入れ難い」との姿勢を崩していない。税収上振れ分の活用への期待感も根強い。

ただ、借金返済に充てるべき税財源まで野放図に政策に回せば、巡りめぐって、国債の増発に跳ね返りかねない。金利先高観の強まりは、新規発行する国債の表面利率だけでなく、過去に発行した国債の借り換え負担にもつながる。

市場には「借り換えコストの増加はタイムラグを伴う。国債費が政策経費を圧迫していくことは今後も避けられそうにない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との懸念がある。

(山口貴也、鬼原民幸 編集:橋本浩)

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