焦点:米新規上場で株価高騰続出、投資銀行の慎重な価格設定に疑問の声

8月21日、米国における最近の大型新規株式公開(IPO)案件では、上場初日に株価が高騰するケースが相次ぎ、投資銀行の慎重な公開価格設定に疑問が投じられている。ニューヨーク証券取引所前で4月撮影(2025年 ロイター/Kylie Cooper)
Manya Saini Niket Nishant
[21日 ロイター] - 米国における最近の大型新規株式公開(IPO)案件では、上場初日に株価が高騰するケースが相次ぎ、投資銀行の慎重な公開価格設定に疑問が投じられている。市場のボラティリティーやトランプ政権の関税措置に起因する経済の不確実性を勘案した投資銀行による保守的な価格設定は投資家にとってプラスだが、発行体は本来調達できる資金が手に入らなくなる。
ロイターがLSEG集計のデータに基づいて計算したところでは、今年これまでのIPO規模の大きさ順で上位20件を見ると、上場初日の株価上昇率は平均36%だった。20件には、デザインソフトウエアのフィグマや、ステーブルコイン発行のサークルなどが含まれている。
この上昇率は、公開価格を適正水準より低くしてしまう「アンダープライシング」を避けつつ、投資家にもリスクを背負う十分な見返りがあるとアナリストが考える15-20%よりもずっと高い。
ディールロジックのデータを分析すると、これら20件の公開価格がこのレンジともっと近い水準になっていれば、企業側は差し引きで61億ドル(約9000億円)多く調達できたという。
投資銀行は、上場後の株価下落を回避しようと公開価格をアンダープライシングするとしばしば非難される。ただ金利上昇の影響で何年も保留されてきたIPOをいざ実施しようという中で、関税を巡る懸念や不安定な個人投資家需要の動向を踏まえると、投資銀行はより警戒的になってしまう、と4人のアナリストや2人のベンチャーキャピタル幹部、2人の業界専門家らは口をそろえた。
IPO調査会社IPOXの調査アナリスト、ルーカス・ミュエルバウアー氏は「現在の市場では、保守的なIPO価格設定は前向きの勢いを生み出し(発行体にとって)長期的な株価のブランド力を構築するための戦略的な選択肢だ」と指摘。上場後の値動きが堅調ならば、企業は追加の資金調達がやりやすくなると付け加えた。
フィグマとサークルの株価は上昇初日にそれぞれ250%と168%の上昇を記録した。暗号資産(仮想通貨)交換のブリッシュも84%弱の値上がりになった。
<読めない個人投資家需要>
IPO市場は今年第1・四半期にトランプ大統領が仕掛けた貿易戦争による市場混乱のあおりで水が差されたが、その後は規制緩和や利下げへの期待でS&P総合500種が最高値を更新したため、地合いが持ち直しつつある。
一方で慎重な公開価格は、振れの大きい市場において投資家を引きつけるかもしれないが、それは発行体を犠牲にしているとの批判も根強い。
上場前銘柄(プレIPO株)取引プラットフォームとして最大手の一角を占めるエクイティゼンの共同創業者フィル・ハスレット氏は「IPO(後の)株高は、一連のプロセスが壊れたままであると思い起こさせる」と語り、伝統的なロードショー(説明会)は機関投資家の意向の確認が目的で、今では相当な規模になった個人投資家の需要をほとんど把握できていないとの見方を示した。
投資銀行は、個人投資家の反応は推測するしかないので、上場後の株価が急変動する可能性が高まっている。
ベンチャーキャピタル企業セオリー・ベンチャーズの創業者トマシュ・タンガズ氏は「IPO市場は基本的に3年間閉ざされていたので、投資銀行の立場で見ると、需要動向は分からない」と同情的だが、案件が増えていくとともに上場を準備しているスタートアップ企業は保守的な価格設定に異を唱えるかもしれないと予想する。
この秋にはフィンテック大手クラーナや、暗号資産交換のジェミニ、医療機器大手メドラインなどのIPOが見込まれ、過去数年で最も活況を呈す展開になる見通しだ。
幾つかの大型新規上場銘柄の値動きに連動するルネッサンスIPO指数は今年に入って15%上がっており、S&P総合500種をアウトパフォームしている。
<代替手段は普及せず>
一般的なIPOのプロセスに批判的な向きが、需要の読み違いを防ぐために何年も前から推奨しているのは、投資銀行の引き受けを介さない「直接上場」だ。近年では音楽配信サービスのスポティファイや、暗号資産交換のコインベースなどがこれを利用した。
ただ米国では、従来のIPOを選んで投資銀行の支援を受けるやり方が好まれており、直接上場はそれほど広がっていない。
米国PwCのIPOサービスを統括するマイク・ベリン氏は「伝統的なIPOの経路は何度も試され(機能が)証明されてきたし、直接上場よりも理解している人が多い」と説明した。
IPOの代わりとして提示された特別目的買収会社(SPAC)の活用は2020年から22年にかけて拡大と縮小を経験した後、今年は主に高成長の暗号資産やハイテク関連企業の間でまた増えているものの、規制上のハードルや払い戻しリスク、株価の不安定化などが依然足かせだ。
フリースタイル・キャピタルのゼネラルパートナー、マリア・パルマ氏は「自分の企業が今IPOを進めようとしているなら、価格設定を間違うリスクがあると分かっていても、これまでの方法でやろうとするだろう」と述べた。
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