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アングル:消費者の倹約指向で「内食」拡大、スーパーや料理宅配は業績改善か

2025年08月22日(金)15時34分

消費者は倹約のために外食よりも自宅で食事する「内食」を選ぶ傾向が強まっている。写真はウィーンにあるレストランバーで、持ち帰りのプラスチック容器に詰められる料理。2020年3月撮影(2025年 ロイター/Lisi Niesner)

Paolo Laudani

[20日 ロイター] - 消費者は倹約のために外食よりも自宅で食事する「内食」を選ぶ傾向が強まっており、スーパーマーケットや料理宅配サービス企業は収益が改善に向かいそうだと専門家は指摘している。

トランプ米大統領の関税政策で経済は先行き不透明感が強まり、インフレが高止まりする公算が大きくなって消費者は外食がコストに見合うのか疑問を感じている。

フィレンツェ在住の教師、マリレナ・グラツィアーノさんはロイターに「以前よりも自宅で食べる機会が増えた。外食は最近とても高くつくし、質が必ずしも保証されていないから」と話した。

米国でフードライオンやジャイアントなどのスーパーマーケットを展開するオランダの小売り大手アホールド・デレーズは今月、内食に特化した低価格商品の提供を拡大していると明らかにした。フランス・ミュラー最高経営責任者(CEO)は今月のインタビューで「家族と一緒に、自宅で、1人あたり2.50ドルのコストで、非常に手頃な食事ができるような解決策を顧客に提供している。このような販売を店舗で大幅に増やした」と述べた。

こうした流れは、新型コロナウイルスの世界的流行期に外出ができなくなりブームとなった内食の復活を示唆している。当時、ジャスト・イート・ドット・コムのような料理宅配企業は売上高が記録的な水準に達したが、その後ロックダウン(都市封鎖)が解除されると苦戦を強いられた。

ラボバンクとユーロスタット(欧州連合=EU統計局)のデータによると、ユーロ圏ではスーパーやハイパーマーケットなどの店舗における食料品の小売り販売が今年1─5月にインフレ調整後で1.5%増加し、前年同期の0.1%増から大幅に伸びた。半面、レストランやバーなど飲食サービスは0.3%減少し、前年同期の横ばいから悪化した。

<レストランは苦境>

ラボバンクの消費者食品部門アナリスト、マリア・カストロビエホ氏によると、実質ベースの数字は、特に平日の日常的な食事で、レストランよりもスーパーマーケットの方が売上高の回復が速いことを示している。持ち帰り料理、サラダ、ラップ、サンドイッチの人気が高まっており「この分野はサービスの提供が大きく拡大して質も上がり、一部の外食事業者から需要を奪っていることが分かる」という。

料理宅配のグロボやフードパンダを傘下に持つデリバリー・ヒーローによると、消費者は経済的に厳しい時期には外出を控え、より安価な代替手段として宅配を利用する。

ミールキット定期宅配サービスを手掛けるドイツのハローフレッシュの委託で米国人男性5000人余りを対象に実施した調査によると、来年は自宅で料理する機会が前年と同じか、もしくは増えるとの回答が93%に上った。来年は自宅での料理が増えるとした回答者の4分の3が経済状況を理由に挙げた。ハローフレッシュは売上高の大半を北米が占める。

人流データ分析を手掛けるプレーサーAIによると、米国では来客数で食料品店がレストランやバーを着実に上回っている。6月に食料品店の来客数は前年比1.3%増えたが、レストランは0.4%減少した。

ウィーンの国際機関に勤めるジェニー・ルスマンさんもスーパーマーケットの利用が増えた。「1カ月ちょっと前から自宅での食事に切り替えた。もっと健康的に過ごしたいと思ったからだけれど、特にコストが理由だ」と話した。

ミラノに暮らし、州政府に勤めるキアラ・スキアボーニさんは物価高と、レストランの料理の量が減っていることを考えて自宅での食事を増やしている。「勤務先から7ユーロの食事券がもらえるけれど、職場近くのレストランではサンドイッチでさえ9ユーロほどもするから買えない。でもスーパーなら食事券が使えて、全体としてはずっとお得」だという。

ロイター
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