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8月ロイター企業調査:日米関税合意、76%が「評価」 業績に「影響なし」42%

2025年08月14日(木)10時01分

 ロイター企業調査で先の日米関税交渉合意の評価を聞いたところ、回答した企業の4分の3が「評価」していることが分かった。写真は、赤沢亮正経済再生相。7月18日、東京で代表撮影(2025年 ロイター)

Tetsushi Kajimoto

[東京 14日 ロイター] - ロイター企業調査で先の日米関税交渉合意の評価を聞いたところ、回答した企業の4分の3が「評価」していることが分かった。合意が各社の業績に与える影響については4割強が「ない」とする一方、「やや悪影響」との回答が33%、「やや好影響」との回答が19%となった。

調査は7月30日から8月8日に実施。497社中241社が回答した。

日米関税協議は7月22日、相互関税を15%とし、自動車・同部品関税も既存の税率を含め15%と、想定されたより低い税率とすることなどで合意した。

<関税合意、不透明感が不安要因>

今回の合意については「一定の評価ができる」との回答が74%に上り、「大いに評価する」の2%と合わせて76%が評価すると回答した。「あまり評価できない」が20%、「全く評価できない」が3%だった。

回答企業からは「粘り強く交渉した点は評価する」(化学)、「関税率が下がったので、評価しても良いと思う」(非鉄金属)、「為替の円安を考えれば御の字」(輸送用機器)などの声が聞かれた。また、「ベースの合意ができたことで次の対策検討段階に進める」(サービス)、「数字が明示されたことで対応の拠り所ができた」(機械)と合意に至ったこと自体を評価する声もあった。

一方で「不透明なところが多く、そこをまず明らかにしてほしい」(ゴム)、「合意の詳細が不明なので評価しきれない」(サービス)、「最悪は回避できたものの、マイナスの影響は想定され、注視が必要」(化学)といった見方もあった。

あまり評価できないと回答した企業からは「関税15%は厳しい」(輸送用機器)、「これまでの対米投資が考慮されていない」(輸送用機器)、「悪くなってないか。(自動車関税は)元は2.5%だ」(運輸)などの声が聞かれた。

今回の関税合意が各社の業績に与える影響については42%が「影響なし」とした。「やや悪影響」(33%)と「マイナスの影響が大きい」(5%)を合わせ業績悪化を予想する企業が38%あったのに対し、「やや好影響」(19%)、「プラスの影響が大きい」(1%)とプラスを見込む企業も2割あった。

特に影響が大きいとみられる輸送用機器では、ロイター企業調査では半数の企業が「やや悪影響」と回答する一方、「やや好影響」と回答した企業も33%と3分の1を占めた。

<関税分の価格、引き上げが8割超>

関税を受けた米市場での価格戦略について聞いたところ、米国向けの事業はないとの回答が63%、関税分は価格引き下げではなく上乗せして対応するとの回答が32%、関税分の価格を引き下げるとの回答が6%となった。

米国向け事業があるとの前提で回答した企業のうち84%が価格を引き上げると回答したかたちだ。

輸送用機器に限ると、米国向けの事業はないと回答した企業が42%、引き上げるとの回答が50%、引き下げるが8%だった。

関税合意を受けて、設備投資計画を修正する予定があるか聞いたところ、95%が特に変更はないと回答、投資計画を縮小するとの回答が3%だった。

<値上げ、限界に近づくが46%>

原材料費や人件費など足元のコスト上昇に対する価格戦略についても聞いたところ、「コストに見合う価格改定を継続できる」とする企業が54%だったのに対し、「値上げは限界に近付いている」とする企業も46%あった。

値上げが継続できると回答した企業からは「サプライチェーン維持のために値上げをしていく」(紙・パルプ)、「高付加価値品を適切な価格で提供していくスタンスに変更はない」(化学)との声があった。

値上げが限界と回答した企業からは「値上げによる需要縮小、市場縮小が顕著」(卸売)、「市場価格に合わせる必要があり、コストに見合う改定は困難」(電機)との声が聞かれた。

値上げによる販売数量の変化については57%が「変わらない」とする一方、「減った」が30%、「増えた」が6%だった。価格改定をしていないとの回答は7%だった。

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