ECB、8会合ぶり利下げ見送り 関税巡る不確実性で 9月緩和に疑問符

欧州中央銀行(ECB)は24日、8会合ぶりに政策金利を据え置いた。フランクフルトの本部、3月撮影(2025年 ロイター/Jana Rodenbusch/File Photo)
Francesco Canepa Balazs Koranyi
[フランクフルト 24日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は24日に開いた理事会で、8会合ぶりに利下げを見送った。欧州連合(EU)とトランプ米政権の関税交渉が続き、不確実性が根強い中、様子見姿勢を取った。
ECBは次の一手について手がかりは示さなかったものの、ラガルドECB総裁が域内の経済情勢に明るい見方を示したことで、追加利下げ観測は後退した。
金利据え置きは市場の予想通り。ECBは過去1年で行った8回の利下げで、中銀預金金利を4%から2%に引き下げている。
ECBは声明で「厳しい世界環境の中で経済は、理事会が過去に実施した利下げを一部反映し、全体として底堅さを見せている」と指摘。「同時に、特に貿易摩擦のため環境は依然として極めて不透明だ」とし、「インフレ見通しと関連するリスク評価に基づき、会合ごとに決定する」とした。物価については「入手した情報はインフレ見通しに関する理事会の前回の評価とほぼ一致している」とし、「域内の物価上昇圧力は引き続き緩和しており、賃金の伸びは緩やかになっている」との見方を示した。
EUが米国と進めている貿易交渉を巡っては、米国がEUに対する関税率を15%に設定することで合意し、米国が今月に入りEUに通達していた30%の関税は回避できる可能性があることが外交筋の話で示された。米ホワイトハウスはこうした見方は推測にすぎないとしているが、交渉が最終段階に入っているとみられるタイミングでECBは金利据え置きを決定した。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ECBは「様子見」モードにあるとし、「われわれの予測では中期的にインフレ率が目標水準で安定することが示されており、良い状況にある」と語った。
さらに「(EUと米国の)交渉の行方を注視している」とし、「貿易を巡る不確実性が早期に解決されれば、対処しなければならない不確実性は軽減する」と述べた
足元の経済状況については「良好な状態」で、成長は予想と一致もしくは「やや上回っている」という認識を示した。
金融市場が見込む秋の利下げ予想は80%に低下。数日前までは利下げの可能性を完全に織り込んでいた。
コメルツ銀行のエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏は「利下げ予想を修正した。もはや9月理事会での1.75%への利下げは見込んでいない」とし、「年内および2026年は2%での据え置きを予想している」と述べた。
関係筋は、ECBが9月に利下げに動くハードルは高いと指摘。利下げには成長とインフレの鈍化に加え、ECBスタッフによる見通しの下方修正が必要になるという見方を示した。