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アングル:株価急騰、売り方の悲鳴と出遅れ組の焦り 調整か継続か

2025年06月27日(金)18時33分

 6月27日、日経平均が直近の2日間で1200円急騰したが、米関税などの不透明感が残る中で想定外ととらえる参加者も多い。都内の株価ボード前で4月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

(取材協力者を追加しました)

Noriyuki Hirata

[東京 27日 ロイター] - 日経平均が直近の2日間で1200円急騰したが、米関税などの不透明感が残る中で想定外ととらえる参加者も多い。急な上昇に売り方は身構え、買い遅れた向きは焦りを感じる展開となっているが、再来週にかけて複数控えるイベントが戦略立て直しの機会になり得る一方、株高地合いが落ち着くかは不透明でもある。

<買い材料集まる>

日本株の急上昇の背景は複合的だ。中東情勢の緊迫が一服したほか、相互関税上乗せの猶予期限延長や米中の緊張緩和への思惑も台頭、米国での早期利下げ観測の強まりが意識されたところに、米半導体企業の決算も堅調で「環境としては悪くない」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは話す。

一方、市場では「これほど上昇するとは思わなかった」(国内証券のストラテジスト)との感想は珍しくない。株価は米関税への警戒感が生じた4月ごろの水準を上回っており、正当化しにくいとみられているためだ。

松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、想定を超える株高を受けて「売り方からは悲鳴が上がった」と指摘する。

4月の急落以降の日経平均は、3万7000円━3万8000円の往来が1カ月程度継続してレンジが形成されつつあった。ところが、中東情勢の緊張が緩和する中で3万8500円を上抜けたことで、3万9000円が次のレンジ上限とみなされ始めていた。

松井証券の店内では、レンジ上限の手前となる3万8000円台後半で売りポジションを構築する動きが観測されていたという。ところが、AI関連株の見直し機運を背景に3万9000円を上抜けたことが、損失覚悟の買戻しに転じるトリガーとなり「踏み上げ」が生じたとみられている。

<乗り遅れ投資家に「焦り」>

急激な株高を受けて逆に「乗り遅れた投資家には判断が難しい局面になってきている」と、いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は指摘する。株価が4月にいったん急落したことで「体感的な適正水準が3万7000円などと低い目線の投資家は少なくない」(秋野氏)という。出遅れ組は「焦り」を募らせることになりそうだ。

「海外勢の買いも続いており、モメンタムが強い。あと1週間程度はラリーが続くかもしれない」とUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストはみている。前日に日本取引所が発表した6月第3週(6月16日─6月20日)の海外投資家による日本の現物株と先物合計の売買は10週連続の買い越しとなった。現物株は12週連続で買い越している。

<株売りイベント>

一方、7月の第2週には、いったん株高が落ち着きそうなイベントが控えている。

ETF(上場投資信託)による分配金捻出のための換金売りが見込まれており、みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「1兆数千億円の売り需要が発生しそうだ」と見通す。

7月9日には、相互関税の猶予期限を迎える。期日が近づけば「慎重な地合いになってくるのではないか」とUBS SuMi TRUSTの小林氏は話す。

足元の株価急騰について、需給面からは、配当金の支払いに伴う再投資への思惑や大型の投信設定を受けた買い需要への思惑などがあったと野村証券の北岡智哉チーフエクイティストラテジストはみている。期間が限られた需給要因が多いとして「時間とともに需給面からの上昇圧力は減衰していくだろう」という。

<株高継続も>

実際に株価が調整含みとなれば、乗り遅れた投資家にとっては仕込み場になりそうだ。ただ、期待通りとなるかは不透明だ。みずほの三浦氏は、ETFの換金売りは「恒例行事でもある。売りに対しては買い向かう投資家もいるため、株価にはニュートラルではないか」との見方を示す。

米相互関税の上乗せ分の猶予期限に向けてはまだ予断を許さないが「延長となれば当面は(株高の)死角を見つけるのが難しくなりそうだ」といちよしAMの秋野氏はみている。過度な警戒感が緩和すれば、株高が促されかねない。思いがけない株高がもたらした悩ましい局面は、継続する可能性もある。

ロイター
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