中国レアアース輸出規制、世界の自動車会社が悲鳴 生産停止懸念

6月3日、ドイツ自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は、中国によるレアアース(希土類)合金・化合物・磁石の輸出規制について「この状況がすぐに変わらなければ、生産の遅れや停止も否定できなくなる」と懸念を示した。写真は2010年10月、中国江蘇省連雲港で撮影(2025年 ロイター)
By Jarrett Renshaw, Ernest Scheyder
[3日 ロイター] - ドイツ自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は3日、中国によるレアアース(希土類)合金・化合物・磁石の輸出規制について「この状況がすぐに変わらなければ、生産の遅れや停止も否定できなくなる」と懸念を示した。
中国のレアアース輸出規制を巡っては、米自動車業界も生産停止のリスクを警告しているほか、先週にはインドの電気自動車(EV)メーカーも同様の事態を訴えており、世界中の自動車メーカーから悲鳴が聞こえてきている。
中国は4月、レアアース磁石など一部の重要鉱物類の輸出停止を決定。世界各地の自動車や航空宇宙、半導体、防衛といった産業が構築しているサプライチェーン(供給網)の中枢を揺るがした。
こうした動きは、レアアースやレアアース磁石の供給で優越的な地位を占める中国が、トランプ米大統領から仕掛けられた貿易戦争への対抗措置として輸出規制を利用しようとしている構図を浮き彫りにしている。
トランプ氏と中国の習近平国家主席は今週、重要鉱物の供給を巡る問題などで電話会談する見通しだ。
レアアース磁石は自動車やドローンからロボット、ミサイルまでさまざまな製品の組み立てに必須の素材だ。しかし、中国の規制システムの下で輸出許可申請が処理される間、中国の多くの港湾で出荷が止まったままとなっている。
中国国営メディアは先週、同国政府が欧州の半導体企業を対象にレアアース輸出規制の緩和を検討していると報じた。また、中国外務省は同規制を巡り関係各国との協力を深める方針を示した。
ただ、輸出業者が不明瞭な輸出許可制度への対応に苦慮する中、中国からのレアアース磁石の輸出は4月に半減した。
関係筋によると、世界のサプライチェーンが停止する恐れがある中、インド、日本、欧州の外交官や自動車メーカー、その他企業幹部はレアアース磁石の輸出承認加速を求めて中国当局との会談を緊急に要請している。日本の企業代表団は6月上旬に北京で商務省関係者と協議する見通しで、大規模な自動車産業を持つ欧州諸国の外交官もここ数週間、中国当局との「緊急」会合を要請しているという。また、インドは自動車業界幹部による訪問を2、3週間内に計画している。