ECBが0.25%利下げ、過去1年で8回目 緩和サイクル一時停止を示唆

欧州中央銀行(ECB)は5日、政策金利を0.25%引き下げ預金金利を2.00%とした。本部で昨年6月撮影(2025年 ロイター/Wolfgang Rattay/File Photo)
Balazs Koranyi Francesco Canepa
[フランクフルト 5日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は5日、市場予想通り政策金利を0.25%引き下げ、預金金利を2.00%とした。インフレ率がようやく目標の2%に戻ったことを受け、1年にわたる金融緩和サイクルを一時停止する可能性を示唆した。
ECBのラガルド総裁は、ECBは現状「良好な立場」にあると発言。市場はこれを、金融緩和の終了ではないにせよ、利下げ休止のシグナルと受け止めた。
ラガルド総裁は記者会見で「0.25%ポイントの利下げと現在の金利経路を踏まえると、われわれは良好な状況にあると確信している」と述べた。さらに、「新型コロナウイルスやウクライナ戦争、エネルギー危機など複合的なショックに対応した金融政策サイクルは終わりに近づいていると思う」と述べた。
市場が示唆する金利の推移は、7月に利下げを一時停止し、12月までにあと1回引き下げられると予想している。
ノルデア銀行は顧客向けメモで「ECBは利下げを終えたとみている。この見方は大きなマイナスのサプライズが表面化せず、経済見通しがECBの予想に沿って徐々に強固になることを条件としている」と述べた。
HSBCも「本日の利下げが当面最後のものになる可能性が高いというのが主な見解だ」とした。
一方、PIMCOのポートフォリオ・マネージャー、コンスタンティン・ファイト氏は「われわれの基本シナリオでは、ECBは7月の理事会で利下げを一時停止し、9月に最終的な利下げを行うと予想している」と述べた。「ECBがこの利下げサイクルでより迅速かつ大規模な利下げを行うには、より景気後退的な状況が必要になるだろう」とした。
ECBは昨年6月以降、8回の利下げで金利を2%ポイント引き下げた。インフレ抑制を認識した上で、貿易戦争のリスクの中、ユーロ圏の経済見通しについて悲観的な見方を強めた。今回の引き下げで金利水準は中央銀行が「中立」とみなす水準となった。
ECBは声明で特定の金利の道筋について事前にコミットしないとし、現在のような異例の不確実性が高い状況ではデータ次第で会合ごとのアプローチをとると指摘。「今後の経済・金融データ、基調的インフレ動向、金融政策の伝達力を考慮したインフレ見通しの評価に基づいて金利を決定する」とした。
ECBのラガルド総裁も記者会見で「現在の水準で、今後生じるであろう不確実な状況をうまく乗り越えられると確信している」とした上で、金利の道筋を「事前に約束する」つもりはないと改めて強調した。
利下げは「ほぼ全会一致」で決定された。利下げに反対したのは1人だけだったという。
また総裁は、エネルギー価格の低下とユーロ高はインフレにさらなる下押し圧力をかける可能性があると指摘。米国の関税引き上げでユーロ圏輸出の需要が減る一方、過剰生産分が欧州に振り向けられれば、この影響はさらに強まる可能性があると付け加えた。
その一方で、世界的なサプライチェーンの途絶は輸入価格を押し上げ、域内経済の生産能力の制約を増大させることでインフレを加速させる可能性があるとも述べた。
投資家らはすでに7月の利下げ一時停止を織り込んでいる。一部の保守派政策当局者も、国内外の異例の不確実性と政策の大変動が見通しにどのような変化をもたらすか見極めるため、利下げ一時停止を提唱している。
ただ市場では、今年後半に少なくともあと1回の利下げが行われるとの予想が大勢。米との貿易戦争が激化した場合は、その後さらに利下げが行われる可能性もわずかながらあるとみている。
<先行き不透明感>
ECBは来年のインフレ見通しを引き下げた。「今後数カ月の間に貿易摩擦がさらに激化すれば、成長とインフレはベース予測を下回る」とし、「対照的に貿易摩擦が穏やかな解決となった場合、成長と、より小さな程度でインフレはベース予測を上回る」との見方を示した。
トランプ政権による関税導入は既に経済活動に悪影響を及ぼしており、たとえ友好的な解決策が見出されたとしても影響は長期化するとみられる。
また政府支出の拡大見通しも認識。「短期的には特に貿易政策を巡る不確実性が企業投資と輸出の重荷になると予想されるが、中期的には国防とインフラへの政府投資の増加が成長を支援する」とした。