ニュース速報
ビジネス

新興市場投資家、トランプ氏政権返り咲きを懸念

2024年09月13日(金)10時57分

 9月12日、米大統領選挙戦は接戦が続き、新興市場への投資家の間で不安が募っている。写真はトランプ前大統領。ペンシルベニア州フィラデルフィアで10日撮影(2024年 ロイター/Evelyn Hockstein)

Bansari Mayur Kamdar

[12日 ロイター] - 米大統領選挙戦は接戦が続き、新興市場への投資家の間で不安が募っている。トランプ前大統領が政権に返り咲けば新興市場に打撃となりかねないためだ。

新興市場は過去数年間、プレミアム市場に比べてさえなかったものの、最近は米国金利の低下見通しを受けて先行きに明るさが見えてきたばかり。しかしアナリストらはトランプ氏再選の場合、貿易障壁が強化され、インフレ率上昇とそれに伴う金利の上昇が勢い付いてドルが高くなり、最終的に新興市場に再び重石になると懸念している。

「ロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラム」でピクテ・アセット・マネジメントのシニア・マルチアセット・ストラテジスト、アルン・サイ氏は「通常、底力を備えた経済成長や持続的なディスインフレ、ドル安は新興市場のマクロ環境としては良好だ」と話す。ただ、新興国は厳しい局面に立つとの見通しを示した。理由として、中国経済が依然、世界経済の足かせだと指摘。さらに、米国による対中関税率の引き上げと世界貿易の混乱がもたらす脅威を挙げた。

トランプ氏は中国製品の輸入関税率を60%引き上げることを検討すると表明済みだ。中国経済への影響についてバークレイズのエコノミストは、国内総生産(GDP)が最初の12カ月で2%ポイント押し下げられる可能性があると推計する。

トランプ氏はまた、他の貿易相手国に10%の恒久的な関税率適用を提起している。

オックスフォード・エコノミクスは、こうした関税政策は米中2国間貿易を70%減らし、数千億ドル相当の貿易が消滅するか、貿易相手国が他の国・地域に移る可能性があると指摘する。

米大統領選の民主党候補ハリス副大統領は、10日実施の初の大統領候補討論会で、トランプ氏の関税政策を中流階級への消費税になぞらえた。ただ、ハリス氏もバイデン政権による関税政策を支持しており、将来的には「ターゲットを絞った戦略的関税」を示唆している。

コンサルティング会社ジエンバ・インサイツの創設者レイチェル・ジエンバ氏は「ハリス政権が発足した場合も、(対中政策として高い)関税を引き続き用いる可能性が高いが、クリーンエネルギー部門への投資など他の手段と併用することを重視するだろう」と述べた。

一方、トランプ氏が返り咲いた場合についてUBSグローバル・ウェルス・マネジメントの最高情報責任者(CIO)マーク・ヘーフェル氏は、選挙運動中に脅しのように提唱した対中60%・その他10%という関税率は、実際には低く設定される可能性があると予想する。

米政府は現在、サプライチェーン(供給網)から中国を外して友好国に差し替える「フレンドショアリング」政策を進めているが、これは米国と足並みをそろえた新興国経済を後押しする可能性がある。

ヘーフェル氏は、サプライチェーンの多様化が再加速した場合、インドやインドネシア、マレーシアなどの東南アジアの主要国が恩恵を受ける可能性があると話す。

「グローバルX ETFs」のシニア・ポートフォリオ・マネージャー兼新興国戦略責任者マルコム・ドーソン氏はインドにとって有利だと指摘する。人口構成が魅力的な上、長期的成長の可能性があることや政府が市場に友好的な点を挙げた。  

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:大火災後でも立法会選挙を強行する香港政府

ビジネス

リオ・ティント、コスト削減・生産性向上計画の概要を

ワールド

中国、東アジアの海域に多数の艦船集結 海上戦力を誇

ワールド

ロシアの凍結資産、EUが押収なら開戦事由に相当も=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中