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香港勢がロンドン商業不動産に積極投資、政治的理由などが背景

2017年08月22日(火)12時32分

 8月21日、民間データによれば、ロンドンの商業不動産に対する中国からの今年上半期の投資額は39億6000万ポンド(51億ドル)で過去最高近辺に。写真はロンドンの金融街。11日撮影(2017年 ロイター/Neil Hall)

[ロンドン 21日 ロイター] - ロンドンの商業不動産に対する中国からの今年上半期の投資額は39億6000万ポンド(51億ドル)で、昨年全体の26億9000万ポンドを上回って過去最高近辺に達したことが、大手不動産会社CBREのデータで分かった。

英国が昨年の国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択して以来、多くの外国人投資家が英国の不動産から資金を引き揚げたが、中国勢だけはその形から「チーズグレーター(チーズ用おろし金)」や「ウォーキートーキー(携帯無線機)」などと呼ばれるロンドンの目玉的な高層ビルを積極的に物色している。その大半は、香港の投資家だ。

不動産コンサルタント会社ナイト・フランクによると、中国からのロンドン商業不動産投資の92%を香港勢が占める。香港の調味料メーカー、李綿記健康食品集団は今月中に12億8000万ポンドを支払って、ロンドン中心部の34階建てビル「20フェンチャーチ・ストリート」、通称ウォーキートーキーを取得する見通し。

中国政府が国内企業の海外投資を厳しく規制している中で、本土の投資家が香港を経由して海外との取引を行っている面はある。ただし、あくまでも主役は香港に拠点を置く投資家だ。

ナイト・フランクの資本市場調査責任者アンソニー・ダガン氏は「(ロンドンの不動産取引で)中国勢のうち本土からのディールの比率は既により小さくなり、香港(の投資家)が最も活発だ」と説明した。

その1つの要因として、香港で政治的不透明感が高まっていることが挙げられる。20日には、2014年の大規模民主化デモの主導者ら3人を実刑判決とした高等法院への大規模な抗議デモが発生した。CBREの国際資本市場責任者クリス・ブレット氏は「中国が香港の統制を強化すると懸念されれば、域外に資金を逃す必要が出てくる。ロンドンは魅力的な投資先だ」と話した。

昨年の英国民投票以降、香港ドルに連動する米ドルに対してポンドが12%下落し、ロンドンの不動産に対して外国人投資家が割安感を持ったことも大きい。

不動産コンサルティング会社クッシュマン・アンド・ウェークフィールドのロンドン中心部責任者ジェームズ・ベッカム氏は「香港勢の英国(不動産)需要は、割安感や法の支配、文化的な親和性、投資分散化の必要によって後押しされている」と指摘した。

ナイト・フランクのデータによると、ロンドンの商業ビルは1平方フィート当たりの価格は香港や東京、ニューヨーク、サンフランシスコの物件を下回る一方、賃料は他のほとんどの国際センターよりも高い。

法律事務所ホーガン・ロヴェルズの不動産責任者ダン・ノリス氏は、中国の投資家は安定と相応に大きいリターンを望んでおり、ロンドンの名物高層ビルは全般的にそうした要素を備えているとの見方を示した。

ロイター
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