ニュース速報

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本積み増し要請 2回で合計114億ポンド

2017年06月27日(火)23時52分

[ロンドン 27日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の金融行政委員会(FPC)は27日、銀行に114億ポンドの自己資本積み増しを求める方針を明らかにした。

1年間の導入期間を設け、カウンターシクリカル資本バッファー(CCyB)を現在のゼロから0.5%へ、11月にはさらに1.0%へ引き上げるという。2段階にわたる0.5%ずつの引き上げで、英銀の自己資本要件は57億ポンドずつ増加する。

英銀の多くはすでに最低水準を上回る自己資本を確保しており、新たな財務増強の必要性は低いとみられる。

FPCは、昨年の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票後、信用状態がひっ迫する恐れがあるとしてCCyBの積み増しを見送っていた。ただ、同国経済は投票後に予想されていた状態より堅調であり、主要な政策金利を引き上げる時期が到来したと考える中銀関係者もいる。

FPCは、金融システムに起因する経済全体に対するリスクは「標準的」な水準に戻ったとし、、銀行は現在の良好な環境によってしか得られない損失の少ない状態に依存し過ぎていると指摘。将来の問題に備え、銀行はより多くの資金を積み立てておく必要があるとの見解を示した。

BOEは「標準的な環境でよくあることだが、警戒を正当化する一部のリスクが存在する」との見方を提示した。

BOEは引き続き、EU離脱に向けた英銀の準備状況を監視していると説明。英国が2019年にEUとの貿易協定がまとまらない状態で離脱し、英銀から大陸欧州の顧客が切り離され、金融安定性が損なわれた場合「そのようなシナリオでは、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)や準備とが最も有効となるだろう」と述べた。

英中銀のカーニー総裁は記者会見で、「金融政策は金融安定を巡る問題に対処するための最終的な手段である」とし、今回の措置は金融政策が近く引き締められることは示唆していないと述べた。

BOEは、国内規制当局が来月、個人向け融資の規制強化を発表すると明らかにした。さらに、個人向け融資の損失に銀行が耐えうるかどうかのチェックを当初予定していた11月から9月に前倒しで行うと発表した。

以前指摘された世界的なリスクの一部は具体化していないと説明。ただ、民間部門の借り入れが年間の経済生産の2.5倍以上に達している中国から発生するリスクを警戒し、「高水準の借り入れは、中国を衝撃に対してぜい弱にする。これは世界経済や英銀行にも影響を及ぼす」と指摘した。

英企業の社債と商業不動産の価値は過剰評価されているとし、これらの価値は低金利により底上げされたが、低金利が弱い経済見通しを反映しているということが考慮されていないようだと説明した。

「現在のロンドンのウエストエンドのオフィス物件価格は推定される持続可能な評価水準を大きく上回っている」との見方を示した。

FPCは、昨年の自己資本算出基準の変更を反映させ、国内銀行の最低レバレッジ比率を3.0%から3.25%に引き上げた。

中銀は英国のEU離脱については、実際に離脱する2019年に向けた国内行の準備状況を引き続き監督すると表明。このほか民間部門の借り入れが急速に伸びている中国に絡むリスクについて警告し、「債務が膨れ上がれば中国は衝撃に対しぜい弱になり、英国の銀行のみならず世界経済全体が影響を受ける」とした。

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダの原油パイプライン拡張完了、本格輸送開始

ビジネス

豪NAB、10─3月キャッシュ利益13%減 自社株

ワールド

ウクライナ、今冬のガス貯蔵量60%引き上げへ

ワールド

ソロモン諸島、新首相に与党マネレ外相 親中路線踏襲
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中