最新記事
健康

【60歳以上は要注意】1日10時間座る生活で認知症のリスクが高まる

TWO DRIVERS OF DEMENTIA?

2024年5月2日(木)11時54分
ジェス・トムソン
悩む老人と介護者

WHO(世界保健機関)によれば、世界の認知症患者は5500万人以上。2050年には1億3900万人に達する ILLUSTRATION BY TATIANA SIDENKO/ISTOCK

<座ったり横になったりしている時間が長い人と白血球染色体の端にある「テロメア」が短い人は認知症になる可能性が高い>

認知症はなぜ起こるのか。その謎に迫る新たな洞察が、2023年秋に相次いで示された。この病気を招く要因を特定する研究が2件、発表されたのだ。

1つは、9月11日付の一般精神医学誌に発表された研究。染色体の末端にある小さなキャップ状の部分(テロメア)が短くなると、認知症のリスクが高まる可能性があることを示した。

翌12日にJAMA(米国医師会報)に発表された研究は、座っている時間が長いと認知症リスクが高まる可能性があると明らかにした。これらの研究は認知症の発症のメカニズムと、それを阻止する方法をさらに究明するのに役立つかもしれない。

認知症とは、脳の損傷や変化の結果、脳機能が低下する症状。アルツハイマー病は認知症の一種であり、アミロイドβとタウという2種類のタンパク質の異常な蓄積によって起こる。認知症を発症させる主な要因の1つは加齢であり、患者は高齢者が多い。

一般精神医学誌に掲載された論文はこの点に踏み込み、テロメアの短縮により認知症のリスクが高まることを発見した。テロメアとは、染色体の末端にある小さな構造。機能的遺伝子が複製中に失われるのを防ぐが、長年の細胞分裂と染色体複製の結果、年齢とともに短くなる。

論文は、大規模な生物医学データベースであるUKバイオバンクから抽出した37~73歳の患者のデータを調べた。すると白血球のテロメアが短い人は、最も長い人に比べて認知症と診断される可能性が14%高く、アルツハイマー病と診断される可能性は28%高いことが分かった。

「私たちは『白血球テロメア長(LTL)』が認知症リスクに関する老化バイオマーカーとなることを発見した」と、論文の著者らは書いた。「本研究で得られた知見は、LTLが脳の健康を示す指標となり得ることを示している」

「加えてLTLの短さは神経心理学的な状態の悪化を示すと見なされているので、LTLを測定することが一般の人々に健康的なライフスタイルの選択を促す手段として考えられるかもしれない」

一方のJAMAの論文は、認知症を招く要因として、日常生活で座っている時間の長さに着目した。研究者らはUKバイオバンクのデータなどを用いて、座りがちな行動を1日10時間以上取っている60歳以上の人は、座っている時間が短い人に比べて認知症のリスクが高まることを明らかにした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中