最新記事
健康

【60歳以上は要注意】1日10時間座る生活で認知症のリスクが高まる

TWO DRIVERS OF DEMENTIA?

2024年5月2日(木)11時54分
ジェス・トムソン

「1日に約10時間にわたり座りっぱなしでいると、認知症のリスクは有意に増加した」と、論文著者の1人である南カリフォルニア大学ドーンサイフカレッジ文理学部のデービッド・ライクレン教授(生物科学・人類学)は語った。「1日10時間の座位行動は認知症のリスクを8%増加させ、1日12時間の座位行動は認知症のリスクを63%増加させていた」

脳血流の低下が原因?

座位行動とは「座っていたり、横になっている状態」で行われる「エネルギー消費量の低さ」を特徴とする覚醒時の行動と定義されていると、ライクレンは言う。

「毎日10時間以上を座位行動で過ごすと、認知症リスクが急速に上昇し始めることが分かったのは驚きだった」と、著者の1人でアリゾナ大学脳研究所のジーン・アレキサンダー教授は述べている。「座位行動と認知症リスクの関係を決定付けるのは、座位行動の総時間であることが示唆された。しかし重要なのは、1日10時間程度より短い座位行動はリスクの増加に関係していなかったということだ」

途中で立って動いた時間があったとしても、認知症リスクに影響するのは座っている総時間だけであることも分かった。「長時間座り続けるのを避けるため、30分ごとに立ち上がったり歩き回ったりすべきだというアドバイスをよく聞く」と、ライクレンは語る。だが研究では「どれだけ連続して座っているかはさほど重要ではないことが分かった」という。

newsweekjp_20240502023015.jpg座っている時間が長いライフスタイルが認知症リスクと関連している正確な理由は不明だと、著者らは語る。その背後にあるメカニズムを完全に理解するにはさらに研究が必要だという。

「脳血流の低下や、座りがちな生活と心代謝性疾患の因子との関連が、認知症リスクの上昇に関与している可能性はある。今後の研究ではこのメカニズムに焦点を当てることになるだろう」と、ライクレンは言う。

テロメアの長さと認知症との関連についても、他の細胞タイプのテロメアの長さを調べたり、テロメアの長さの変化によって認知症リスクがどう変わるかを調査するなど、さらに研究が必要だと一般精神医学誌の論文の著者らは説明している。

「いくつかの限界を考慮しなければならない」と、著者らは書いた。「LTLは47万人近い参加者について、研究開始の時点で1度測定しただけだ。今回の研究結果からは、LTLの変化が認知症発症の可能性に影響を及ぼすかどうかは明らかにできなかった」

さらに認知症の診断は電子カルテのみから取得したため、認知症の症例が完全にカバーされていない可能性があるという。それらを踏まえた上で「因果関係に関する結論は慎重を期すべきだ」と、著者らは語っている。

<ニューズウィーク日本版『世界の最新医療2024』より>

20240618issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ連立与党、国民の不満が過去最高=世論調査

ビジネス

スリランカ向け支援、IMFが2回目の審査承認 経済

ワールド

米大統領選、トランプ氏がバイデン氏を2ポイントリー

ビジネス

焦点:FRB、政治リスク回避か 利下げ「大統領選後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 4

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 5

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 8

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 9

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中