ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ政権、低過ぎる想定長期金利がはらむリスク

2017年05月26日(金)08時42分

 5月24日、トランプ米政権の予算教書が示す財政政策によって、実際のGDP実質成長率が政権の期待通り3%に高まったとしても、政府が借り入れで負担するコストは想定外に増大する公算が大きい。写真はワシントンで2015年9月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米政権が議会に提出した予算教書が示す財政政策によって、実際の国内総生産(GDP)実質成長率が政権の期待通り3%に高まったとしても、政府が借り入れで負担するコストは想定外に増大する公算が大きい。金利が跳ね上がるため、企業や家計が支出を抑えて肝心の成長が鈍化し、政権が目指す長期的な財政赤字削減にも支障をきたしかねない。

エコノミストによると、経済成長率と米10年国債利回り(長期金利)には、ざっくりとしているが直接的な相関性がある。もし実質成長率が加速して持続的に3%ペースで推移するようになれば、長期金利は政権が想定する3.8%をはるかに超え、過去のケースに基づけば恐らく5%に向かってもおかしくない。

そうなると米連邦準備理事会(FRB)は、これまでの緩やかで漸進的な利上げという方針を抜本的に見直す必要が出てくる。

キャピタル・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ポール・アッシュワース氏は「概して言えば、長期金利の平均は(名目GDP)成長率に近づくはずだ。現在の予算案では物価上昇を加味した名目成長率は5%と見込まれている」と指摘。トランプ政権の予算案は、長短金利のカーブが全般的に今より高かった金融危機以前の世界に戻ることを意味すると説明した。

2007─09年の金融危機以降、低成長と物価の落ち着きが定着し、FRBは政策金利を10年にわたって低水準に維持してきた。力強い成長と生産性上昇が見られた1990年代、長期金利は常に5─6%のレンジかもっと高い水準で取引されていたが、過去数年間は2─3%で推移している。

その長期金利が今後どの程度反発するのかについて過小評価すれば、即座にトランプ政権の痛手として跳ね返ってくる、と主張するのは非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」のシニア政策ディレクター、マーク・ゴールドウェイン氏だ。今後10年間、実際の長期金利が見積もりに比べて1%高くなれば、連邦債務はおよそ1兆ドル上振れするという。

長期金利高騰は米国の金融環境も一変させる。企業や家計は、資金調達コストがほぼゼロの状況から、借り入れに相当な対価を支払う時代に適合しようとするからだ。

ゴールドウェイン氏は、予算教書で想定される金利は成長率を踏まえると低いように思われ、もっと金利が高くなって消費者や企業が借り入れを圧縮する事態が起きれば、政権が目指す3%成長を幾分損なう恐れがあるとの見方を示した。

(Howard Schneider記者)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送米、民間人保護計画ないラファ侵攻支持できず 国

ビジネス

米財務省、中長期債の四半期入札規模を当面据え置き

ビジネス

FRB、バランスシート縮小ペース減速へ 国債月間最

ビジネス

クアルコム、4─6月業績見通しが予想超え スマホ市
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中