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次会合で政策検証、必要なら追加緩和=黒田日銀総裁

2016年07月29日(金)18時11分

 7月29日、日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、9月の次回会合で過去3年半の政策効果を検証し、必要ならば追加緩和も辞さない意向を示した(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 29日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は29日の金融政策決定会合後の記者会見で、9月の次回会合で過去3年半の政策効果を検証し、必要ならば追加緩和も辞さない意向を示した。

今回の会合で踏み切った上場投資信託(ETF)の買い入れ倍増による追加緩和は、政府の経済対策と相乗効果が期待できると述べた。

<QQE「14年夏ごろまで順調」>

黒田総裁が就任直後の2013年4月に導入した、巨額の国債買い入れを主軸とする「量的・質的緩和(QQE)」は、当初2年で2%の物価目標必達を掲げていた。しかし足元5月の物価(生鮮除く消費者物価指数、コアCPI)はマイナス0.5%にとどまっており、2%の実現を信じるのがやや難しい状況となっている。

総裁は「14年夏ごろまでは順調だった」ものの、最近は物価を目標の2%に押し上げるのは「道半ば」だとして、次会合で政策を検証すると説明した。

ただ検証の結果、政策の設計変更に踏み切っても、あくまで「2%の早期実現の観点で行う」とし、「量は重要」とも指摘。日銀が買い入れることのできる国債が減少するため、いずれ買い入れペースを緩めるなどの思惑をけん制した。

その際、「検証結果に応じて必要ならば必要な措置を取る」として更なる緩和強化への期待をつないだ。しかし一部の中央銀行のように、市場の期待をつなぐための「時間稼ぎではない」とも指摘した。

<量に限界ない、ETFも必要なら増額>

市場では、国債買い入れやマイナス金利の深掘りは、持続性や、金融機関への悪影響の点から追加緩和手段として採りづらいとの指摘もある。総裁は「マイナス金利や量の拡大は限界に来ていない」「国債買い入れへの障害はまったく起きていない」「これまで国債は全体の3分の1を買ったが、まだ3分の2が市場に残っている」とし、政策限界論の払拭に努めた。

ETFは「今後も必要があれば増額を検討する」と明言。「ETFの買い入れ増で株式市場の機能を損なうことはない」とした。

<財政・金融ポリシーミックス「ヘリマネ」でない>

先進国中銀の金融緩和策について限界論が増えつつあるなかで、一部識者の間で、永久債の引き受けで中央銀行が資金供給を行う事実上の徳政令「ヘリコプターマネー」が話題となっている。

総裁は、ヘリコプターマネーは「人によって定義が違う」が、「財政・金融政策の一体運営との意味であれば法律で禁じられている」と指摘。今回の日銀のように、政府の財政政策とタイミングを合わせて金融緩和を強化するのは「国債発行に伴う金利上昇を抑えるためのポリシーミックスであり、ヘリコプターマネーではない」と総括した。

(竹本能文、伊藤純夫)

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