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円安でも製造業心理は慎重、非製造業に原油安の恩恵=日銀短観

2015年04月01日(水)11時57分

 4月1日、日銀が発表した3月全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断DIがプラス12と前回調査から横ばいにとどまり、円安による輸出・収益増にもかかわらず、企業の慎重姿勢がうかがえる内容となった。写真は、日銀、2013年2月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断DIがプラス12と前回調査から横ばいにとどまり、円安による輸出・収益増にもかかわらず、企業の慎重姿勢がうかがえる内容となった。

一方、大企業非製造業はプラス19に改善。原油安に伴うコスト低下が円安によるコスト増の影響を上回った可能性がある。

2015年度の設備投資計画は大企業全産業で前年比1.2%減と小幅のマイナス見通しでのスタートとなった。

<自動車・電気機械が横ばい、想定為替レートは保守的>

大企業製造業の業況判断DIは、ロイターの事前予測調査ではプラス14が見込まれていたが、結果はこれを下回った。

円安進行による輸出や収益の拡大を背景に景況感改善を予想する調査機関が多かったが、前回の昨年12月調査とDIの水準に変化はみられなかった。業種別に見ても、特に円安の恩恵が大きいとみられている自動車や電気機械などが横ばいにとどまった。大企業製造業の売上計画を見ても2015年度の輸出は、前年比1.6%増が見込まれているものの、中国向け輸出の鈍化や国内販売の低迷などが企業の見方を慎重にしている可能性がある。

輸出・収益増も円安という外生要因の面があり、業況判断DIの先行きもプラス10と悪化が見込まれている。もっとも、2015年度の想定為替レートは1ドル111.81円で、足元の同120円程度に比べて保守的。収益は上振れ余地がありそうだ。

大企業非製造業は2期連続で改善。円安進行によるコスト増を背景に事前予想ではプラス16と小幅の悪化が見込まれていたが、結果はこれを上回った。需要好調で不動産がプラス33と11ポイント改善したほか、外国人旅行客の消費増もあり、小売がプラス5と4期ぶりに改善。原油価格下落によるコスト低下などで電気・ガスが3期連続で改善するなど、全体でも原油安の影響が円安の影響を上回っているとみられる。

一方、景況感の先行きはプラス17と2期連続で悪化予想となっている。

中小企業は製造業がプラス1となり、前回から3ポイント悪化した。先行きはゼロと2期連続で悪化が予想されている。非製造業はプラス3と2ポイント改善。改善は4四半期ぶり。先行きはマイナス1と7期連続の悪化予想となっている。

<設備投資計画は小幅マイナスのスタート、雇用ひっ迫続く>

2015年度の事業計画は、全規模全産業ベースで売上高・経常利益ともに同0.6%増と小幅の増収・増益が見込まれている。円安による輸出・収益の改善や原油価格の下落によるコスト低下を反映したものとみられる。

一方、設備投資は大企業製造業が同5.0%増、非製造業が同4.1%減となり、大企業全産業ベースでは同1.2%減となった。過去の平均と比べて製造業が強め、非製造業が弱めのスタートになることが見込まれているが、日銀では全体として「水準感は悪くない。過去と比べても違和感はない」(調査統計局)とみている。これまでの設備投資動向をみても「耐震など安全対策や維持・更新の上積み、能力増強投資も散見されている」(同)という。

雇用は引き続き、ひっ迫した状況が続いている。雇用人員判断DI(過剰─不足)は全規模全産業でマイナス17と人手不足感が拡大。規模・産業別にみてもすべてが不足超方向の動きになっている。水準としては、大企業が08年のリーマンショック前、中小企業は1990年代前半までさかのぼるひっ迫状態となる。

<市場に失望感、株売りも>

今回の短観は、市場の事前予想に比べて景況感は大企業製造業が弱め、同非製造業が強めの内容となったが、市場では大企業製造業が横ばいにとどまったことに失望する声が多い。

みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、3月短観について「景気回復力の弱さを反映した内容」と受けとめている。

株式市場では、短観結果を売り材料に指摘する声も出ているが、上野氏は「株式市場を中心とする強気なビューと、ビジネスの実態を直に感じる企業のビューの間にギャップがあり、現在の株価水準に上振れ感がある」と指摘している。

*内容を追加して再送しました。

(伊藤純夫)

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