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2025年06月30日(月)13時55分

 6月30日、ブラックロック・ジャパンは、日本株に強気のスタンスを継続する。写真は同社のロゴ。2021年5月、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Carlo Allegri)

[東京 30日 ロイター] - ブラックロック・ジャパンは、日本株に強気のスタンスを継続する。日本経済はリフレ(脱デフレ)の好循環にあるとの認識が背景にあり、恩恵を受ける不動産などのセクターに関心を示す。一方、米国の関税政策はグローバル製造業には好ましくない環境であり、投資対象の魅力は二極化する可能性があるという。株高継続には国内政治の安定性など3つのリスク要因があるとも指摘している。

同社の地口祐一チーフ・インベストメント・ストラテジストがロイターのインタビューで述べた。

<リフレへの取り組み評価>

地口氏は日本企業がリフレに前向きに取り組んでいることを評価、「日本株に対する基本スタンスは、引き続きポジティブ」という。

    値上げの動きが広がっており、4─6月期も想定を上回る売上高になると予想、営業利益率も堅調となり「キャッシュフローの増加が、賃上げや設備投資、自社株買いや配当に活用されている」と指摘する。過去30年間のデフレ経済下では考えにくかった光景で、日本企業はバランスシートに現金を積み上げるだけでなく、それを戦略的に活用するフェーズに入っているという。

<リフレ銘柄とグローバル製造業、投資妙味「二極化」>

    セクター別には、リフレの恩恵を受ける銘柄に妙味があるという。「これまで金利上昇に弱いとされてきた不動産株やREIT(不動産投資信託)が、逆にリフレ環境下で見直されている」と指摘。参院選を経て政治の枠組みが確認できれば「もっと積極的な環境になる」と話している。

    日銀の利上げを契機に、日本経済がリフレの方向にあることを「世界の投資家は認知した」とし、明確にトレンドが転換したとの見方を示す。

    一方、米国市場に軸足を置くグローバル製造業は「関税率引き上げがファクト(事実)として残り、関税の経済的なインパクトは避けられそうにない」とみている。リフレの恩恵を受けるサービス業と、世界の製造業との間では、投資対象としての魅力の面から「二極化が進むのではないか」との考えを示した。

    もっとも、製造業の中でもAI(人工知能)、データセンター関連の設備投資需要は有望だという。メタバースなどライフスタイルを大きく変えそうな技術の進展を見込み「それを支えるハードウェアの需要が今後も伸びる」との見立てだ。

    AI分野の中核をなす半導体関連では、露光装置、製造装置、検査装置など工程ごとに、これまでの再編を経てプレーヤーの数が限られており、需要が高まる際には、その限られたプレーヤーに注文が集中する展開を予想。日本企業は、半導体製造装置に加え、部材や素材などにも強みがあるとして、中長期的に投資妙味のある銘柄もあると話す。

<日本株高に「3つのリスク」>

    もっとも地口氏は、日本株の上昇基調の継続は、大きく3つあるリスク要因次第との見方も示す。

    その1つは、国内政治の安定性だ。参院選を控える中、先立つ東京都議選で自民党は議席を減らした。地口氏は、参院選を経て政治の枠組みがどうなるかを見極める必要があるとの考えを示す。物価上昇の局面にありながら日銀が利上げを見送る要因にもなり得るとして、年内に追加利上げが可能かは、政治動向次第との見方を示している。

    米国の関税政策も、不透明要因の1つに挙げる。トランプ政策の不透明感を嫌気してドルの下落基調が継続しており、仮に日本との貿易協議が穏当な結果になったとしても、ドル安が続くなら「米政策発の通貨市場へのインパクトが、日本への投資の魅力を左右しかねない」との見方だ。

    連邦準備理事会(FRB)の金融政策も、これから消費者物価指数(CPI)に関税のインパクトが表れてくるとし「予測は難しい」と話す。一方、直近四半期のCPI伸び率が前の四半期を下回っている点に着目。次の四半期に前年比伸び率で2%前半が見込めるなら「利下げの確度は上がり、9-12月に利下げがあってもおかしくない」とみている。

    3つ目のリスクは、米国の超長期金利の動向だ。「(日本の)30年・40年国債の利回りは米30年債と連動性が高く、日銀の政策より、グローバルな需給によって動く」と指摘。超長期国債が売られるようなら、その影響は他の年限にも波及し、イールドカーブ全体が持ち上がる可能性もあるとの見方を示す。この上で「何年かかけて10年金利が2%になることも、リスクシナリオのひとつとして描いておく必要がある」と話している。

    (インタビューは26日に実施しました。)

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