コラム

プーチンの侵略戦争に「No!」渋谷に2000人、国内最大規模の叫び

2022年02月26日(土)22時10分

渋谷ハチ公前にウクライナ人と日本人約2000人が集まった (筆者撮影)

<ロシア軍の攻撃にさらされる母国や家族を守るために何もできない在日ウクライナ人の絶望が伝わってきた。家に帰って#CNNを観るだけの自分だが、それでも味方であると言いたい>

プーチンが第二次世界大戦以降の世界秩序をひっくり返してから、日本時間換算でこの原稿執筆時点(2月26日夕刻)において第3日目となる。プーチンはその目論見をウクライナ東部ドンバス地方であると世界の目線を欺罔しておいて、実際の主目標はドンバスなどではなく最初から首都キエフの占領及び、クリミア方面から北上する助攻によってウクライナの事実上の南北分断にあることが明らかとなったと言える。

プーチンが古典的な侵略戦争を開始した以上、またも古典的な戦争の教科書に従えば、地の利があるウクライナ軍は、兵力に劣るとはいえ、ある程度善戦しているとの報があるが、それはまたぞろ古典的な遅滞戦術を取りつつウ軍が後退している結果なのか、或いは道路等を通じて突出してきたロシア軍小部隊を伏撃している結果なのか、全く情報が錯綜しており分からない。いずれにせよウクライナ軍の初期善戦が事実だとしても、ウ国境に展開した20万人程度のロシア軍全部が戦線に投入されておらず、余力を残している事実を考えるとき、圧倒的物量に対してウ軍は根本的戦局の挽回には至っていないと考えるのが普通で、結局キエフは陥落必至なのではないか、というのがまず共通諒解であろう。

でっち上げの侵略戦争

そんな中、世界中で、ロシア国内でも、プーチンの滅茶苦茶なでっち上げの大侵略戦争へ反戦の声が上がり始めたのは必定である。そして遂に日本でも、ウクライナへの本格侵略から初めての週末となる2月26日13時ごろから、東京・渋谷で在日ウクライナ人らを主催とした侵略後、最大級の反戦大規模集会が開催されたのであった。この集会は、在日ウクライナ大使館などがSNS上などで事前に拡散していたが、主催者は在日ウクライナ民間人有志であり、全く草の根の集会で、それに対しプーチンの侵略を許さないという想いを持った多くの日本人もが参加したものである。最終的に主催者発表によるとそれは2000人以上になるという壮挙である。

プーチンによる全面侵略に憤怒する私は、渋谷での反戦集会を知り矢も楯もたまらず、即座に渋谷に向かった。集結場所の渋谷ハチ公前は13時を過ぎて、すでに黒山の人だかりであった。如何にこの侵略に対し、非ウクライナ人=日本人も強い義憤を抱いているのかがわかる。コロナによる密状態を少しでも抑えんがため、やがて群衆は在日ウクライナ人主催者らと、群衆である日本人らに分かれていく。ウクライナ国歌斉唱が始まり、大喝さいが起こる。群衆の多くは日本人で、その国家に謳われている歌詞の意味が何であるかは分からないと思うのだが、斉唱が終わると自然と「NO WAR」の叫びが上がる。ウクライナ人からは「ウクライナ!ウクライナ!」の連呼が起こった。彼らの遠き故郷を思う気持ち、救国の志が痛いほど伝わってきた。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story