コラム

失言王「森喜朗」から変質した自民党20年史

2021年02月08日(月)19時00分
失言王「森喜朗」から変質した自民党20年史

首相時代にも自己中心的な失言でマスコミを賑わせていた森(写真は2020年7月17日) Issei Kato-REUTERS

森喜朗氏の女性蔑視発言が国内外で大きな問題になる中、今次東京五輪開催もますます微妙な暗雲が立ち込めている。森氏の失言癖は今日・昨日に始まったことではない。森氏は2000年に当時脳梗塞で入院・急逝した小渕氏の後継として総理大臣となり、その期間約1年の短命内閣に終わった。

森内閣発足当初から森氏の失言・舌禍は大きな問題となり、内閣支持率は場合によっては一けた台に落ち込み、自民党は危機感を募らせる。森内閣と自民党への支持率低下を受けて「改革」「刷新」の声が急速に沸き起こり、小泉内閣の劇的な誕生へとつながっていく。

約1年の政権担当期間中、森氏は「失言総理」という印象ばかりが際立ち、多くの国民はそのことばかりを記憶している。しかし、今振り返ると森内閣はその後の自民党の「構造的変質」を決定づけたものであった。

端的に言えばそれまで自民党内で非主流派であった清和会の天下という派閥力学の交代と、森内閣倒閣を目指した「加藤の乱」の失敗をきっかけにした「保守本流」たる宏池会系の分裂と凋落である。

21世紀における自民党の20年史を考えるとき、あらゆる意味で森喜朗氏はキーパーソンであった。本稿では今回の失言を"奇貨"として、「森喜朗」から変質した自民党20年史を足早に追う。

森喜朗氏の原点──石川県能美市を訪ねる

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森喜朗氏の父・森茂喜氏を称える「友好の館」(石川県能美市、筆者撮影)

石川県の空の玄関・小松空港を降りて県都金沢市に向かう途中に、能美(のみ)市がある。後背に雄大な白山連峰がそびえ、肥沃な田園が広がる金沢平野のほぼ中央に位置し、小松市に隣接するこの街は、人口5万に満たない。しかしこの街こそ森喜朗氏の地盤である。

過日この地を取材で訪れた私は、森氏の生家に向かった。なぜならそこには「森喜朗記念館」が併設されているからである。勇んで古民家然とした記念館のインターホンを押したが、奥間から出てきた館内関係者によると"開店休業状態"とのこと。森事務所の係員が不在につき中は見られなかった。

森一族は典型的な地元の名士、土豪である。森喜朗氏の父・森茂喜(しげき)氏は戦前期に軍人を経て、戦後は後に能美市の範囲となる根上(ねあがり)町長を連続当選9回、実に35年以上に亘って続けた。森喜朗氏にとっては祖父となる森喜平(きへい)氏も戦前期に根上村長であった。森一族は江戸期から続く豪農であり、この地に政治的影響力を持ち続ける。

森一族の偉業を称えるように、「森喜朗記念館」にほぼ隣接して「森茂喜友好の館」が設置されている。森氏の父・茂喜氏は石川県が日本海に面する環日本海文化圏という事もあってか、日ソ協会の会長を務め、冷戦下日ソ友好関係の樹立に邁進した。「森茂喜友好の館」には、その功績をたたえるように日露の国旗が写真の如く掲載されている。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』など。

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