コラム

「第2自民党」を自認し、共産党はなくなっていいと言った日本維新の会・馬場伸幸代表から失われた「野党の矜持」

2023年07月31日(月)16時51分

議会制民主主義のもとでは、諸党派はお互いを批判しあい、ときには罵り合う。選挙運動も熾烈を極め、自分の党派を一議席でも増やし、相手の党派を一議席でも少なくすることに尽力する。ときには相手の議席をゼロにしようと支持者に訴えることもある。言論の府である国会でも、ときには文字通り体を張らねばならぬときもある。しかしそれらは全て、相手党派の存在論的な否定ではない。もちろん、ナチ党のような排外主義政党など、絶対的に否定されるべき政党は存在する。だがそのような例外を除けば、議会主義は様々な党派が並立することが前提となったシステムであり、それぞれの党派が持つイデオロギー的な立場の違いを超えた役割分担を受け入れなければ成り立たない。

たとえば与党は政府を形成し国政を担う。野党はそれをチェックし批判する。与党は野党に攻撃の隙を与えないよう公正な政治を行う責任があり、野党は「批判なき政治」すなわち独裁政治にならないように、与党が行う国政をしっかりと監視する責任がある。相手の存在をいったんは認めるからこそ、緊張感が生まれ、責任ある政治が生まれる。

ここでもし、相手を存在論的に否定することが許されるなら、政権与党は強権をもって反対党を弾圧し、反対党は政権与党に対して暴力をもって報復することが肯定されてしまうことになる。したがって議会制民主主義ではルールとして、相手の存在については相互保障する。馬場発言は、その議会制の根源的なルールを破ろうとするものだ。従って、これは「信念」の問題として片づけることはできない。馬場代表、そして日本維新の会の議会制民主主義に対する理解が問われているのだ。

「第2自民党」は詭弁

果たして馬場代表は、こうした議会制民主主義のシステムを理解しているのだろうか。ここで重要なのが、馬場代表がこのとき行った「第2自民党」発言だ。馬場党首は、維新の会を「第2自民党」と定義し、「第1」自民党との「改革合戦」を提示する。維新の会は日本社会の徹底的な改革を訴えており、「改革合戦」というビジョンも、従来の日本の議会制の在り方を変えようとする意図に基づいている。

「第2自民党」という言葉は日本政治に関する議論において。これまでも使われてきた。日本人の多くは保守的なのだから、中道右派と中道左派の政権交代は望めず、政権交代を起こしたければ中道保守同士で行うしかない。すなわち「第2自民党」をつくるしかないというものだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米トマホーク850発以上使用、イラン攻撃4週間 国

ワールド

アングル:米民主党、牙城カリフォルニア州の知事選で

ワールド

アングル:米の中東関与の隙突く中国、台湾は軍事圧力

ワールド

イエメン・フーシ派、イラン情勢巡り軍事介入の用意 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 6
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 7
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 8
    ニュースでよく聞く「東京外国為替市場」は、実際は…
  • 9
    アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える
  • 10
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story