コラム

「あの」河瀬直美監督とは思えない繊細さでマイノリティ選手にスポットライトを当てていた東京五輪『SIDE:A』、よけい注目の『SIDE:B』

2022年06月23日(木)16時28分

河瀨直美は映画のイベントで、オリンピックを開催したことはよかったと何度も発言している。しかし映画そのものは、オリンピックの開催についてはっきりと肯定するものにはなっていないのだ。スポンサーである五輪関係者に対するリップサービスが必要なのかもしれないが、そのことが映画の宣伝として正しかったのかは疑問だ。

もしかすると本人の性格が、作品のもつ政治的な繊細さを打ち消すぐらい傲慢なのかもしれない。冒頭で述べたように河瀨直美についてはパワハラ疑惑も報じられている。しかしそのせいで、この映画の最もよい視聴者となりえた人々を、すっかり敵に回してしまっているのだ。

もっとも、選手以外にスポットを当てた『SIDE:B』は、これから公開される。その中では、『SIDE:A』で見られた女性やマイノリティに対する寄り添いとは真逆の、政治的偏見が開陳されているのかもしれない。いずれにせよ、答え合わせはこれから、ということになるだろう。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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