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ドイツも苦しむ極右監視と人権のジレンマ
この教科書の著者は憲法学者の尾高朝雄だが、尾高の死後、同僚の宮澤俊義は彼に捧げた論文「たたかう民主制」(尾高朝雄教授追悼論文編集委員会編『自由の法理』有斐閣、1963年、87-111頁)で、この「ほととぎすの卵」の例を引き合いに、「戦う民主主義」について検討を行っている。彼はレーヴェンシュタインの議論を引用しながら、民主制は民主主義の敵に対して「積極的にたたかう覚悟」をもたなくてはならないと述べる。しかしだからといって、その戦いが行き過ぎてしまい、人権を損なうものであるなら本末転倒だ。この緊張関係は「民主制のジレンマ」だ。
従って、宮澤は反憲法勢力の制限を憲法によって規定するかどうかは重要視しない。反人権的な民主主義の敵とは戦わなければならないとしても、しかしその戦いは「決して人権に対してたたかうべきではなく、どこまでも人権によってたたかわなくてはならない。それが実際問題としてどのようにむずかしくても、民主制は、民主制であるかぎり、この心がまえをもちつづけなくてはならない」(109頁)のだ。
人権を出発点に置いた場合、AfDの問題は、この政党の民族至上主義的性格を一つの意見として許容すべきか、それとも民主主義の敵とみて国家によって徹底的に弾圧すべきか、という単純な二択にはならない。そして「戦う民主主義」を採用していないからといって、日本の政治における反民主主義的・反人権的な言動や活動を許容すべきだということにもならないのだ。
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