コラム

逃げ場を失うリビアのアフリカ系移民

2011年02月24日(木)16時36分

リビアからチュニジアへ避難するエジプト人(2月23日)

国境を越えて リビアからチュニジアへ避難するエジプト人(2月23日)
Zohra Bensemra-Reuters


 リビア国内の動乱がどれだけ悪化しているか、国境を見ればよく分かる。何十万人という人々がすでに国外へ逃れ、さらに30万人がその途上にいるとみられる。「まるで旧約聖書の『出エジプト記』だ」と、イタリアのフランコ・フラティニ外相は語っている。国際赤十字の地域代表は、チュニジアとの国境で今日新たに1万人が避難してくる事態に備えていると、BBCの取材に答えている。

 避難しているのはリビア人だけではない。リビアには150万人の移民が暮らしている。国際移住機関(IOM)の推定によれば、その多くはサブサハラ(アフリカ大陸でサハラ砂漠よりも南の地域)の出身者だ。リビアは、ソマリアやエリトリア、チャドなどから約8000人の難民を受け入れている。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、こうした移民のコミュニティーと「接触できない」状態にあると憂慮する声明を出している。実際、難民は危険な状態にあるかもしれない。リビアからのツイッターによれば、アフリカ系の移民は、傭兵と間違われるのを恐れて家を出ることができないという。

 難民が出始めたということは、目下の人道危機に加えて、リビア社会が構造的から揺らいでいることを示すだけに深刻だ。抑圧された社会で反政府デモに立ち上がるには、もちろん計り知れない勇気が必要だ。だがすべてを捨てて逃げ出すのもまた同様に、想像を超える恐怖と未来への絶望を感じていなければできないことだ。

 難民問題の解決には、数週間や数カ月の単位ではなく何年もの長い年月がかかる。リビア情勢の影響の大きさを過小評価する声があったとしても、難民問題を思えば甘い考えは吹き飛ぶはずだ。最高指導者のカダフィ大佐がどうなろうと、リビア再建の道のりは長い。

──エリザベス・ディキンソン
[米国東部時間2011年02月23日(水)10時19分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 24/2/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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