コラム

次の大統領にはペトレアス将軍を

2010年04月06日(火)17時22分

 アメリカ中央軍司令官デービッド・ペトレアス将軍は、彼が2012年の米大統領選に出馬するという期待を繰り返し打ち消してきた。それでも期待を捨てきれない人々がいる。英テレグラフ紙のワシントン特派員、トビー・ハーンデンもその一人。将軍は是が非でも立候補すべきだと主張する


 多くの有権者が政界のアウトサイダーを待望している。信頼できて高潔で、実績が証明されている誰か。生涯を政界でのし上がることだけに捧げてきたのではない誰か。党派主義や政治不信が幅を利かせてきたこの数年の間に、名声を上げた公的機関は唯一、米軍ぐらいだろう。将校たちは、第二次大戦の英雄パットン将軍が言う「現代における古代の英雄たちの代表」のように尊敬されている。

 バラク・オバマ大統領の後継者を探すのに、軍ほど適した場所があるだろうか。第二次大戦中に欧州の連合軍最高司令官を務めたドワイト・アイゼンハワーが大統領に選ばれた1952年以来、軍人が大統領になる可能性が今ほど高まったことはない。

 なかでもデービッド・ペトレアス将軍は抜きん出ている。アメリカ中央軍司令官として、23万人の部隊を率いてイラクとアフガニスタンの2つの戦争を戦ってきた。自ら立案したイラク増派作戦で窮地の米軍を救い、勝利を掴み取った後、今はアフガニスタンで同じ苦難と闘っている。


■アメリカ人は政府より軍隊を尊敬している

 イメージとしてのペトレアスではなく、候補者としてのペトレアスに有権者が飛びつくという考え方には、私はいつも違和感を感じてきた。彼の軍事的功績は本物だが、NATOの元欧州最高司令官ウェスリー・クラークが身をもって学んだように、戦場での強さは必ずしも選挙の足しにはならない(クラークは04年の民主党大統領候補選びに参戦したが、撤退した)。

 アメリカ人が政府より軍隊を尊敬しているのは確かだが、投票行動には結びついていない。最近の5回の選挙では、ジョージ・H・W・ブッシュ、ボブ・ドール、アル・ゴア、ジョン・ケリー、ジョン・マケインなどの元軍人は皆、戦闘経験のない候補に敗退している。

 第一、ペトレアスの支持基盤は誰なのだろう。まずイラクとアフガニスタンに対する政策を、彼が大きく見直すとは思えない。彼自身が作ってきた政策でもあるからだ。そしてオバマの社会問題に対する姿勢や経済政策に怒っている有権者はおそらく、こうした分野で実際に何か意見を述べたことがある人を探そうとするだろう。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年04月05日(月)12時16分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 6/4/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

和平計画、ウクライナと欧州が関与すべきとEU外相

ビジネス

ECB利下げ、大幅な見通しの変化必要=アイルランド

ワールド

台湾輸出受注、10カ月連続増 年間で7000億ドル

ワールド

中国、日本が「間違った」道を進み続けるなら必要な措
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story