最新記事

アメリカ政治

共和党「最後の良心」リズ・チェイニー、トランプ批判で追放の危機

Everything Liz Cheney Has Said About Donald Trump

2021年5月10日(月)17時08分
アレクサンドラ・ハッツラー
共和党ナンバー3のリズ・チェイニー下院議員

チェイニーの非は、昨年の大統領選に勝ったのはトランプではないと言明し、議事堂襲撃事件でトランプを非難したこと(写真は2017年) Mark Makela-REUTERS

<トランプに対するまっとうな批判を、共和党は今も受け入れられない。それほどトランプ頼りの党だ>

ディック・チェイニー元米副大統領の長女で、現在は下院議員のリズ・チェイニーが、所属する共和党内から非難を浴びている。昨年の大統領選をめぐってドナルド・トランプ前大統領が根拠のない不正疑惑を言い立てたことや、1月6日の米連邦議会襲撃事件でトランプが果たした役割について、批判的な発言をしたせいだ。

きっかけは3日、トランプがメディア向けの声明で、20年の大統領選は将来、「大きな嘘」として知られるようになるだろうと述べたのにチェイニーが噛みついたことだ。

チェイニーはツイッターで「20年大統領選は盗まれていない。そんなことを主張する人は、法による統治に背を向け、われわれの民主制度を害し、『大きな嘘』を広めていることになる」と述べた。

また同じ3日、チェイニーは保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所がジョージア州で開いたイベントでトランプを名指しで批判した。

「嘘の土台には党や保守主義運動の再建はできない。選挙は盗まれたという考えを信奉するわけにはいかない」とチェイニーは述べた。

「(そうした考えは)わが国の民主主義の血流にとって毒となる。郊外の有権者を取り戻し、20年の選挙でわれわれに票を投じてくれたすべての人を引き留めるには、アイデアと政策を使うべきだ。個人崇拝のカルトになるわけにはいかない」

院内総務からは「戦力外通告」

チェイニーはまた、共和党は「1月6日の(米連邦議会襲撃)事件を取り繕ったり、トランプの大きな嘘の定着に手を貸したり」するわけにはいかないと述べた。

だがチェイニーの発言には共和党内から反発の声が多く上がった。下院共和党の序列第3位の座からチェイニーを引き摺り降ろす動きもある。ケビン・マッカーシー共和党下院院内総務は4日、チェイニーが「職務を遂行できるか」疑問視する声が共和党の議員の間で上がっていると述べた。

チェイニーが共和党内からの批判にさらされるのは今年に入って2回目だ。チェイニーはトランプに対する弾劾決議案を支持し、共和党に造反した下院議員10人のうちの1人。2月にはチェイニーの役職を解くべきかをめぐって下院共和党でが行われ、145対61で否決されていた。

チェイニーは弾劾に賛成した理由について、連邦議会襲撃事件を起こした支持者の集団をトランプが呼び集めたのは明らかだからだと説明。「その後の出来事はすべて彼のしわざだ」と述べ、「アメリカ大統領による、大統領職と憲法の(遵守を誓った)宣誓に対するこれほどの裏切り」は前例がないと語った。

チェイニーはトランプの在任中から、外交政策などで政権への批判を繰り返してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中