コラム

米アフガン新戦略、増派は3万4000人か

2009年11月25日(水)19時04分

 米マクラッチー紙の報道によれば、バラク・オバマ米大統領は約3万4000人をアフガニスタンに増派する計画をまとめつつあるという。


 現時点の増派計画は以下の通り。3月からの9カ月間に、ケンタッキー州フォート・キャンベル陸軍航空基地に駐屯する第101空挺師団の3個旅団、ニューヨーク州フォート・ドラム陸軍基地の第10山岳師団、そしてノースカロライナ州キャンプ・レジューンの海兵隊部隊から、最大2万3000人の戦闘部隊と後方支援部隊を派遣する。

 加えて、7000人強からなる師団司令部が、アフガニスタン南部に駐留する米軍主導のNATO(北大西洋条約機構)軍部隊の指揮を取るために派遣される。アフガニスタンの陸軍と警察の拡充を加速するため、4000人の米軍軍事顧問も派遣するという。


■政治的に安全な選択肢

 これはおそらく短期的には最も安全な政治的選択だろう。アフガニスタン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル司令官の要求の範囲内でありながら、彼の提言にすべて従ったわけでもない。過去数週間、オバマが慎重に他の選択肢も検討したこと印象付ける情報のリークが相次いだ。またこの計画には、いつでも作戦を見直せるよう数多くの「出口戦略」も含まれている。

 オバマは、12月1日に全米に向けて彼のアフガン新戦略を発表すると伝えられる。これほど大がかりな新戦略の発表にあたり、具体的な達成目標を設定するのは大統領にとって危険なことだ。もし計画通りに行かなければ、格好の批判材料を提供してしまうことになる。

 だが戦争が8年も続いた今となっては、オバマができうる限りの詳細を説明してくれることを最低限期待したい。アメリカにとって、アフガニスタンでの戦略目標は何だと考えるのか、なぜ他の手段ではその目標を達成できないのか、そしてこの作戦の成否の線引きはどこで行われるのか。

 これはもうオバマ自身の戦争だ。パキスタン・アフガニスタン問題担当のリチャード・ホルブルック特別代表は8月、アフガン戦略が成功か失敗かは「その時がくればわかる」と言ったが、そんな言い逃れはもう通用しない。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年11月24日(火)15時57分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 25/11/2009.
© 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、スビリデンコ第1副首相を新首相に指

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story