コラム

アフガン大統領選はここまで汚い

2009年08月20日(木)14時32分

pass040809.jpg

汚れた手 再選を目指すカルザイにも裏取引の疑惑が絶えない(8月7日、カブール) Omar Sobhani-Reuters


 選挙をするからといって、アフガニスタンが民主国家ということにはならないと、オンラインマガジン「ワールド・ポリティクス・レビュー」のジョシュア・ファウストは指摘する。


 民主選挙にはいくつかの基本原則がある。自由で公正な投票、誰にも強要されない候補者選び、そして参加者全員が選挙結果を尊重することだ。アフガニスタンはいずれにも該当しない。


 ファウストはアフガニスタンの政治指導者を決める戦略的重要性は否定しない。だが、20日の大統領選挙は民主主義の信奉者たちが望む姿からは程遠いという彼の議論には説得力がある。

■「人殺し」も呼び戻して票固め


 まずは自由で公正な投票を見てみよう。アフガニスタンの独立系ニュース通信社パジウォクは、有権者に対する脅しなど、選挙を妨害する事件を掲載するために紙面を丸1ページ割いている。タリバンによる妨害ではない。政府はアブドラ・アブドラ前外相の支持者を逮捕するし、警察は投票箱をもっと増やして欲しいと頼んだヌーリスタニ族の人々を殺害するなど、脅迫や妨害はいたるところに及んでいる。

 政府は、伝統的な部族民兵組織をモデルにした部族治安部隊を作っている。これらの部隊は優れた武器を与えられ、並みの民兵組織のように武装解除や解散を強制されることもない。その彼らが武装して全国に散らばり、選挙実施のための治安維持にあたるのだ。

 大統領選出馬への支持をアメリカの新聞に訴えていた軍閥出身のナンガルハル州知事グル・アガ・シェルザイは、立候補の締め切り直前に突然、出馬を取りやめた。現職のハミド・カルザイ大統領と取引をしたという噂だ。

 取引と言えば、今年8月、カルザイがウズベク人軍閥のアブドゥル・ラシッド・ドスタム将軍を亡命先から帰国させたのも納得がいかない。ドスタムは、アメリカのアフガニスタン侵攻作戦に参加した01年、投降タリバン兵を大量殺戮した嫌疑をかけられている人物だ。ウズベク人の票欲しさに帰国させたとみられるが、「自由と公正」はいったいどこにあるのだろう。


■前回選挙より民主的かどうかも疑問

 ドスタムの突然の帰国とカルザイへの支持表明は、とりわけどす黒い感じがする。そもそもドスタムを追放したのはカルザイ政権であり、04年の大統領選挙ではドスタムはカルザイの有力な対抗候補の一人だった。だが今となっては、抗議する手立てもない。選挙を止めるわけにもいくまい。

 選挙が暴力で中断されないと仮定すれば、次に問うべきは、アフガニスタンが04年以降、どれだけどんな進歩を遂げたのかということだ。民主国家とは呼べないとしても、前より民主的にはなったのか。

──マイケル・ウィルカーソン
[米国東部時間2009年08月18日(月)18時25分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 20/8/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数は横ばいの21.3万件、労働

ワールド

トランプ大統領、イラン次期指導者の選出に「関与する

ビジネス

EXCLUSIVE-NATO、集団的自衛権行使の協

ビジネス

米インフレと雇用改善、FRBのリスク見通しを変更も
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場所にSNS震撼「自国の場所すらわからない」
  • 4
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 7
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 8
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story