コラム

崖っぷちに立たされたブラウン

2009年06月05日(金)08時23分

造反有理 閣僚から退陣要求を突きつけられ絶体絶命のブラウン Reuters
 

 国会議員の不正経費請求問題でゆれるイギリス政界では、ジェームズ・パネール雇用・年金相がゴードン・ブラウン首相の辞任を要求して4日夜に突然辞任。政治危機が新たな段階に入った。

 5日の英ガーディアン紙は以下のように報じている。


 パネールはブラウンに「次の選挙で労働党が勝つための退陣」を要求、政権維持を目指す首相に大きな打撃を与えた。

 実質的に「ブラウンでは(選挙は)勝てない」と言い切ったパネールの発言は、ただでさえ低下しているブラウンの権威をさらに弱めるだろうし、発言のせいで政権は新たな「危険水域」に入った。パネールは4日に行われた地方選挙と欧州議会選の投票が終了した後、ブラウンに電話で辞意を伝えた。

 首相側が予防的な措置を講じたり辞職にストップをかけたりしないよう、パネールが秘密裏に事を進めていたせいで、ブラウンはその辞意にまったく気づいていなかった。

 パネールの広報担当は「彼は次の選挙で労働党が勝つためには、ブラウンが今辞任すべきだと感じている。彼自身が首相を狙っているとか、誰かと連携して動いているわけではない。ポストや政治的キャリアとは無関係の行動だ」と語っている。


 今回の欧州議会選で労働党は大敗する見通しだ。ブラウンは週明けの8日にも内閣改造を発表する予定だったが、この24時間で辞任した閣僚は3人。今回の痛恨の一撃を受け、さらなる権威の失墜を防ぐため、ブラウンは内閣改造を5日に前倒しせざるをえなくなるかもしれない。

 パネールの辞職は労働党内の反ブラウン派議員の首相辞任要求にも弾みをつけそうだ。たとえブラウンがここで踏ん張っても、「ブラウンが首相のままでは選挙で保守党を勝たせるだけ」というパネールの糾弾に反論はできない。

――ジェームズ・ダウニー


Reprinted with permission from FP Passport, 05/06/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シェル、第1四半期は28%減益 予想は上回る

ワールド

「ロールタイド」、トランプ氏がアラバマ大卒業生にエ

ワールド

英地方選、右派「リフォームUK」が躍進 補選も制す

ビジネス

日経平均は7日続伸、一時500円超高 米株高や円安
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story