コラム

共和党と民主党どこが違う

2012年09月19日(水)13時54分

 米大統領選挙は共和党、民主党いずれも党大会を開いて候補者を決定。選挙戦は早くも終盤の気配です。

 共和党と民主党は政策が大きく異なります。小さな政府を求める共和党と、大きな政府を容認する民主党。この点が、差異が曖昧な日本の民主党と自民党とは違います。

 日本の民主党と自民党は、消費税増税にどちらも賛成しましたし、整備新幹線や高速道路建設推進など基本方針は変わりません。

 政策が大きく異なるアメリカの共和党と民主党の支持者とは、どんな人たちなのか。どんな違いがあるのか。それがよくわかる写真があります。

 民主党の支持者たちの写真が、本誌日本版9月19日号に掲載されているからです。党大会に出席した代議員たちが、オバマの4年間に対して「THANK YOU」のプラカードを掲げている写真です。

 これを見ると、白人、黒人、ヒスパニック、アジア系と、実にさまざまな人種が写っています。ターバンを巻いたインド人(シーク教徒)も目立ちます。女性の多さも特徴的です。

 共和党大会の代議員層とは大きく異なるのです。

 8月末、私はフロリダ州タンパで開かれた共和党大会を取材しました。そこに集まった代議員の顔ぶれを見た同行のテレビプロデューサーは、「日本の農協の全国大会みたいですね」と感想を漏らしました。地方の農家の男性たちと思しき人たちばかりだったからです。中年の白人男性が圧倒的で、一部に高齢の白人女性が混じっていました。

 黒人の数は極端に少なく、アジア系もヒスパニック系も探すのに苦労します。こういう人たちが共和党を支持しているのですね。

 こうして見ると、古きアメリカを代表する中西部では共和党が強く、西海岸や東海岸など移民が多い州では民主党が強い理由がわかろうというものです。

 共和党大会でも民主党大会でも、中南米系のヒスパニックの知事や市長、議員たちが次々に演説しました。「ヒスパニックを重視していますよ」とのアピールなのですが、代議員の顔ぶれを見る限り、「ヒスパニックの代表」は民主党です。

 選挙の行方は混沌としていますが、もし民主党のオバマが勝利するとすれば、この写真に代表されるような「多様性」こそが勝因になることでしょう。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story