コラム

世界が尊敬する日本人

2009年07月08日(水)19時07分

 私は京都のある大学で週1時間だけ「メディア論」の授業をしています。先日のテーマは「雑誌の読み方」。読んでいる週刊誌や月刊誌を持参し、なぜその雑誌を購入したか語ってもらうことにしました。

 「雑誌は買わない」「読まない」という学生も多かったのですが、ひとりが持ってきたのが、「ニューズウィーク日本版」7月8日号でした。マイケル・ジャクソンの特集を読みたかったのかと思いきや、「世界が尊敬する日本人」の特集があったから、という返答でした。とかく日本人は自信喪失気味。そんな気分のときに、元気の出る、勇気をもらえる特集が気に入ったようでした。書店の店頭で表紙を見て、買う気になったのですね。ちなみに、ニュース週刊誌を持参したのは、この学生ひとりでした。

 この特集で取り上げられている日本人の中には、私が知っている人も何人かいることはいるのですが、その多くは、知りませんでした。それだけ私の視野が狭いということなのですが、世界には、私たち自身が知らない日本人が数多く活躍しているのですね。

 それにしても、ニューヨークで活躍するイラストレーターの清水裕子、ケニアの伝統楽器を演奏する向山恵理子、イギリスのティーハウス・オーナーの宮脇樹里......。海外で活躍する日本人女性の多いこと!

 取材する側に男性が多いから、こういう選択になるのではないかと邪推したくなります。

 だって、男性を取り上げてインタビューしている人の名前を見ると、女性が多いのですから。  取り上げられている100人を仔細に見ていきますと、「ムサシ」がいたり、「サツマ」という蜜柑だったり、人型ロボット「サヤ」だったりと、おいおい、現在活躍している日本人じゃあないだろう、と思わず突っ込みを入れたくなる「人」も含まれています。

 100人を揃えるのに苦労したのでしょうか。それだと、ちょっとガッカリですが。

 でも、国連PKO局の中満泉ディレクターを紹介した次の言葉は、励みになります。

 「謙虚さや自己主張が苦手といった日本人の資質が国際舞台では足かせになるという考えを、中満は一蹴する。教育レベルの高さや勤勉さ、押しどころと引き際を心得たバランス感覚など、日本人であることは逆に強みになるという」

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダもパレスチナ国家承認の意向表明、イスラエル反

ワールド

韓国との貿易協定に合意、相互関税15% トランプ米

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き トランプ氏任命の

ビジネス

FRB、政策決定で政府の金利コスト考慮しない=パウ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 9
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story