最新記事

中国

慰安婦カードを使わせる中国――習近平とサンフランシスコ市長の連携プレー

2017年11月30日(木)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

韓国の独立記念日に行われた反日デモと慰安婦像(3月1日、ソウル) Kim Hong-Ji-REUTERS

韓国の国会が「慰安婦の日」を記念日と決定しただけでなく、サンフランシスコ市長が22日、慰安婦像を受け入れた。これらの背景には中韓関係だけでなく、習近平とサンフランシスコ市長との思わぬ結びつきがある。

サンフランシスコ市長が慰安婦像設置を承認

11月22日、アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエドウィン・リー市長は、慰安婦像の寄贈を受け入れることを承認した。この慰安婦像はサンフランシスコを中心とした華人華僑の反日団体である「史維会」などが在米コリアン市民団体などと協力しながら建てたもので、3体の像は韓国、中国およびフィリピンの慰安婦を象徴しているのだという。3体の像から少し離れた場所で、1991年に元慰安婦として初めて名乗り出た韓国の金学順さんを表す像が3体の像を見つめているという形になっている。9月に民有地に設置し、10月に土地ごとサンフランシスコ市に寄贈した。

「史維会」の正式名称は「世界抗日戦争史実維護聯合会」。英語名は"Global Alliance for Preserving the History of WWII in Asia"で、GAという名で知られている。

2014年7月17日付けの本コラム「なぜサンフランシスコに抗日戦争記念館?――全世界に反日運動を広げる中国の狙いは?」で詳述したように、史維会は1994年12月に設立された。

もともとは1989年6月4日の天安門事件で民主化を叫ぶ若者たちを武力で鎮圧したことに対する抗議運動から始まったものだったが、1994年に江沢民が愛国主義教育を始める頃には、すっかり中国大陸の巧みな手法によって洗脳されてしまい、中国政府に呼応する形で、同年、史維会を結成するに至る。それというのも、中心となったのが台湾系の在米華人で、中国大陸が80年代末から全世界の華人に向けて張りはじめたキャンペーンである「中国和平統一促進会」(和統会)運動に乗ってしまったからである。和統会が提唱する「以経促統(経済の連携を強めることによって統一を促進する)」戦略に賛同するようになったことが大きなきっかけだった。そのため史維会のメンバーの中には中国政府のために発信することを条件に中国とのビジネスに熱を入れている者もいる。

「以経促統」は、実質上は「チャイナ・マネーで民心を買う」ということになる。中には主義主張を貫くメンバーもいるが、ほとんどがチャイナ・マネーに心を買われている。北京の顔色を窺いながらでないと行動しない。

結果、今では中国政府と連携しながら、中国政府のために動いていると言っても過言ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ衛星通信利用へEUの資金援助提言=欧州委

ワールド

新たな核合意に2カ月の期限、トランプ氏のイラン宛て

ワールド

EU、鉄鋼の輸入制限厳格化へ 米関税受けた流入増阻

ワールド

EU、軍事支出拡大と防衛強化へ ロシア懸念で203
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 5
    ローマ人は「鉛汚染」でIQを低下させてしまった...考…
  • 6
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 7
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 8
    DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ…
  • 9
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 5
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中