コラム

古川聡さんに聞いた宇宙生活のリアル...命を仲間に預ける環境で学んだ「人を信じること」の真価

2024年12月04日(水)17時00分
古川聡

東大安田講堂での一般向けミッション報告会終了後、ぶらさがり取材に応じる古川聡さん(6月23日) 筆者撮影

<宇宙で現場主導の研究は実現しそうか、「不適切な論文」問題を経て「人を信じること」に対する考えを変えたか──医師のバックグラウンドを持つ現役最年長のJAXA宇宙飛行士・古川聡さんに「研究や学習の在り方」「仲間とのチームワーク」「行動規範の作り方」について聞き、その内面に迫った>

ISS(国際宇宙ステーション)で働く宇宙飛行士の1日はとても多忙です。

直近のミッションで約199日間ISSに滞在し、本年3月に帰還した古川聡さんは、11月に開催された「JAXAシンポジウム2024」で宇宙飛行士の1日をこのように紹介しています。

ISSでは、実験や機器のメンテナンスを地上のスタッフと協力しながら行います。典型的な1日のスケジュールは、朝6時に起床して朝食、そしてその日にやることの手順の予習などをします。7時半に当日の仕事の打ち合わせを地上の管制チームと行い、そこから仕事が始まります。あいだに昼食1時間、運動2時間ほど挟んで、夜7時すぎくらいまで仕事です。その後も翌日の手順書を見たりするので、結構忙しいです。土日は休みですが、土曜は半日くらい掃除をします。日曜はしっかり休めます。

古川さんは自分自身の身体変化をつまびらかに記録し、一般の人たちにもSNSを使って伝えていました。もっとも、それは宇宙飛行士に課された正式な実験ではないので、あくまで休日や仕事の空き時間を使って行いました。

宇宙での実験や検証は公募などによって内容が決まり、宇宙飛行士は現場作業を担います。古川さんは、次世代水再生実証システムのサンプル採取や微小重力での立体臓器創出の基盤技術の開発、宇宙での火災に備えた燃焼実験などを行いました。いずれも地上にいる研究者が考案したもので、今後の人類の宇宙進出の基礎技術として大切なものです。

ただ、筆者は以前から、バックグラウンドが豊富で宇宙の現場を知る宇宙飛行士ならではの発想で実験を構想し採用されることがあってもよいのに、と思っていました。

「宇宙での身体の変化」「宇宙での知見を地球に活かす方法」「惑星探査時代の宇宙医学」などについて話を聞いた前編に続き、今回は「研究や学習の在り方」や「仲間とのチームワーク、人を信じること」など古川さんの内面に迫ったインタビューを紹介します。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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