コラム

目撃者続出! 流星と、流星より明るい火球にまつわるトリビア

2022年08月23日(火)11時25分

明け方や夕方の飛行機は、流星や火球と最も見間違えやすいものです。「30秒以上見える」「先端が光る」「途中で方向を変える」などの飛行機の特徴を知っておくことが見分けるコツと言います。流星や火球はほとんどが数秒以内、長くても10秒程度で視界から消え、直線的に飛行します。移動スピードも飛行機よりずっと速いです。

もっとも、明るい火球は、流れた後に飛行機雲のようなものを残すことがあります。これを「流星痕」と言い、ときには数十分にわたって見えることもあります。

見分けるのが最も難しいのが、人工衛星の落下です。天然の流星物質か、人工的な物質という違いがあるだけで、宇宙から地球に飛び込んで、大気によって発光するという点は変わりません。人工衛星の一部だけ落下することもあり、明るさや挙動では見分けられません。

流れ星が流れるのは「神が天国のドームを開けて人間界を見守るとき」

ところで、流れ星が消える前に願い事を3回繰り返すことができたら願いは叶う、という伝説を聞いたことはあるでしょうか。

カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)のジョン・G・バーク名誉教授は、著書の『Cosmic Debris: Meteorites in History』(1991年)で、「かつてキリスト教では、神が天国のドームを開けて人間界を見守る際に、流れ星が流れると考えられていた。そこで、星が光っている間(天国のドームが閉まる前)に願い事をすれば、神に届いて願い事を叶えてくれると信じられた」と説明します。通常の流れ星は数秒で消えてしまって、願い事を3回繰り返すのは難しいからこそ、語り継がれてきた伝説なのでしょう。

流星は、流星群の時期でなくても、目視が難しい暗いものも含めれば毎日無数に出現しています。明るい火球に願掛けをすれば確かにご利益は高そうですが、天国のドームはいつでも開かれているのかもしれませんね。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

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