コラム

他の動物のミルクを飲むヒトの特殊性と、大人が牛乳でお腹を壊す理由

2022年08月09日(火)11時25分

乳糖の分解は、ラクターゼのみによるわけではなく、腸内の微生物も大きな役割を果たします。日本人の成人の約80%はラクターゼを産生できませんが、学校給食で牛乳を飲み続けた若い世代は、腸管が乳糖の刺激に慣れたり乳糖分解に役立つ腸内細菌叢ができたりしたことで、上の世代と比べて乳糖不耐の症状が現れないと言われています。

他の動物のミルクを飲むヒトの特殊な食文化は、数千年という短い期間で哺乳動物の常識を超える進化を果たしたばかりでなく、戦後数十年間で日本人の消化器も順応させつつあります。ヒトの適応力は素晴らしいですが、今後は緩やかな進化で対応できるような穏やかな環境が続けばよいですね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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