コラム

2023年秋、AI業界勢力図① Nvidiaの独り勝ち

2023年10月17日(火)16時20分

一方で、次に注目されたのが、インターネットブラウザのシェア争いだ。私もInternet ExplorerとNetscapeのシェアの変動に関する記事を多く書いた記憶がある。しかしそのシェア争いがひと段落すると、ウェブサイトの競争になった。

モバイルの業界も同じ。昔は、iPhoneとAndroidのシェア争いが話題になったが、今注目を集めているのがアプリのレイヤーだ。

つまり産業が成熟すると激戦のレイヤーが上に上がるわけだ。AI業界はまだまだ黎明期。なので、今一番の激戦地帯は一番下の半導体などのインフラレイヤーになっている。

GPU不足が上のレイヤーに影響

現在この半導体のレイヤーで最も強いのがNvidia。同社のAI向け半導体GPUがすごい人気で、品不足が続いている。OpenAIのCEOのSam Altman氏はニュースサイトのインタビューで、GPU不足で思うように新しい機能を開発できないと語っている。他のテック大手もGPU不足に悩んでいるようで、x.ai という新たなAIベンチャーを設立したイーロン・マスク氏も「麻薬を購入するよりGPUを購入するほうが難しい」とSNSに投稿している。テック大手は、Nvidiaと提携したり、同社に資本参加してもらうなど、あの手この手でGPUをかき集めようと必死になっているようだ。クラウドレイヤーや、言語モデルレイヤーの勝敗は、技術力などの実力より、GPUをどれだけ多く集められるかにかかっているといえそうだ。

NvidiaがGPUの製造を委託している台湾のTSMC社は、2024年末にGPUの生産ラインを倍増する計画。それ以降は供給が安定する可能性があるが、それ以上にAIを巨大化しようという動きが強まれば、倍増ぐらいでは追いつかないかもしれない。

すべては、AIを大きくすればするほど性能が向上するという経験則が今後も続くのかどうかにかかっているといえそうだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story