コラム

次のキーテクノロジーは音声、次の覇者はAmazon

2016年04月06日(水)17時00分

レスポンスタイム短縮で山を超えた

 なぜここまでの大ヒットになったのだろうか。この記事は、Echoの音声コマンドに対する反応時間(レスポンスタイム)がキーになっていると指摘している。

 その当時のレスポンスタイムは、最先端の技術を持つところでも、約3秒。AmazonのCEO、Jeff Bezos氏はそれを1秒に短縮するように開発チームに命じたという。

 Bezos氏は、Appleの故Steve Jobs並みのワンマン経営者として業界内で有名な存在。何十年も対話エンジンに取り組んできた企業や大学の研究所でも3秒以下のレスポンスタイムを実現できないというのに、開発を始めたばかりのチームにBezos氏は1秒に短縮するよう命じた。開発チームは驚愕したという。

 開発チームは、できるだけ多くのデータを集めて改良を繰り返すという地道な作業を繰り返し、最終的には約1秒に短縮することに成功したのだという。

 またレスポンスタイムだけではなく、マイクの性能も優れているようだ。僕自身はまだEchoを実際に利用したことがないので分からないが、実際にEchoを取り寄せて研究したロボットベンチャーの社長によると、マイクの指向性が半端ないのだという。部屋の隅から発声しても、子どもたちが走り回る騒々しい部屋でも、「Echo、〇〇して」というコマンドを聞き分ける。人間の耳は、雑音の中から人の声だけに集中して聞き取る能力があるが、Echoにも同様の能力が搭載されているようだ。

 人間の声を聞き分けて、すばやく反応する。この当たり前のことが、できるようになったことで、音声がキーボードを超える入力装置として評価され、Amazon Echoが爆発的に売れ始めたということだ。やはり消費者は、ストレスなく使えるレベルの音声入力技術を心待ちにしていたのだろう。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

テスラ会長、マスク氏の後継CEO探し否定 報道は「

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ビジネス

NZフォンテラの消費者事業売却、明治など入札検討か

ビジネス

三井物産、26年3月期純利益は14%減見込む 資源
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story