- HOME
- コラム
- 世界のテロ情勢を読み解く
- テロが招く国家間戦争...インド×パキスタン、カシ…
テロが招く国家間戦争...インド×パキスタン、カシミールで始まる報復連鎖が「核」に火をつける日

Dilok Klaisataporn -shutterstock-
<再び流血の舞台となったカシミール。国家の影がちらつく越境テロは、偶発的な衝突から全面戦争へと連鎖する危険をはらんでいる>
2025年4月22日、インドが実効支配するジャム・カシミール州のバイサラン渓谷(パハルガム近郊)で、観光客を標的とした銃撃テロが発生した。武装集団が主にヒンドゥー教徒の観光客26人を殺害し、17人が負傷した。この攻撃は、2000年以降で民間人を標的とした最も死者数の多いテロ事件となった。
インド当局は、攻撃を「越境テロ」と断定し、パキスタンに拠点を置くイスラム過激派組織「抵抗戦線(TRF)」が犯行声明を出したと発表。ただし、TRFは後に声明を否定した。
インドはTRFを、パキスタン拠点のラシュカレ・トイバ(LeT)の分派とみなし、パキスタンの関与を非難。ナレンドラ・モディ首相は「テロリストを追跡し処罰する」と報復を宣言した。一方、パキスタン政府は関与を否定し、中立的な第三者調査を提案したが、インドに拒否された。
過去にも同様の事件が連鎖してきたカシミール
インドは直ちに対抗措置を講じた。主要な陸路国境の閉鎖、パキスタン人へのビザ発給停止、外交官以外の国外退去命令を発出し、インダス川条約の停止を宣言。
パキスタンはこれを「戦争行為」とみなし、対抗措置としてインド便の領空通過禁止や貿易停止を決定。両国間の緊張は急激に高まり、4月24日から支配線(LoC)沿いで小規模な銃撃戦が頻発した。5月7日、インドは「Operation Sindoor」と名付けたミサイル攻撃を実施。
パキスタンとパキスタン支配のカシミールにある9カ所の拠点を攻撃した。インドは民間人や軍事施設を避けたと主張するが、パキスタンはモスクを含む民間施設が攻撃され、26人が死亡、46人が負傷したと発表した。